国土交通省は、地方整備局ごとに直轄工事での新技術導入をサポートする「技術支援組織」を構築する。人工知能(AI)やデジタル分野の最新技術を直轄工事に速やかに取り込むため、出先事務所からの依頼を受けて現地の課題に応じた工法を抽出し、発注書類に反映させる。新たな技術基本計画の骨子案に盛り込んだ。
インフラの整備・管理を担っている出先事務所は日常業務に時間を取られ、加速度的に進化する新技術の選定に時間をかけることが難しい。そこで、技術支援組織が現地調査によって課題を把握して最適な工法を抽出し、特記仕様書の作成や歩掛調査を経て発注書類に反映させる。先行事例としては九州地整管内の技術事務所があり、同様の取り組みを水平展開する。
個別工事のサポートだけでなく、複数の新技術を比較する仕組みの整備や、得られた知見のデータベース化、外部組織との連携、DXを活用した発注業務の省力化なども担う。
従来、技術基本計画では推進すべきイノベーションの内容に力点を置いて記載していた。次期基本計画ではこれに加え、イノベーションを産学官で推進する体制(エコシステム)の確立に焦点を当てる。
研究開発支援や現場実証、表彰制度といった技術開発に関わる個別施策を、▽研究開発▽実装▽普及―の各段階にまとめ、一元的に推進する技術開発プラットフォームを整備する。国の支援制度や、建設現場での導入までの道筋を分かりやすく示し、金融機関からの投資やスタートアップ企業の研究開発を呼び込む。
イノベーションの先導役として、国総研など国の機関を「マネジメント機関」と位置付けることも盛り込んだ。自ら新技術を研究するだけでなく、国交省の政策ニーズに沿った大学・民間の研究とも連携する。そのための人員・組織の拡充も目指す。マネジメント機関は現場から寄せられたニーズを踏まえ、研究公募や開発支援、技術相談などどを担う。
計画の骨子案では、官民でイノベーションを担う人材の育成策も示した。中小企業に対しては、公共調達での若手活用に対する加点といったインセンティブの強化、好事例を基にした手引きの作成といった手法を盛り込む。
提供:建通新聞社