全国中小建設業協会(全中建)の河ア茂会長が建設専門紙の就任インタビューに応じ、中小建設業が適正な利潤を確保できるよう、市町村が入札契約制度を改善する必要性を改めて指摘した。9月に始まった国土交通省とのブロック別意見交換会でも「発注者が決める予定価格が適正であるのであれば、なぜ100%の落札率で受注できないのか」と、国交省に市町村への制度改善に向けた指導を強く働き掛ける。
6月の総会で、土志田領司前会長から会長職を引き継いだ。「社会に貢献する力強い地場産業を目指す」という全中建の主張を実現するため、公共事業予算の安定的・持続的な確保、第1次国土強靱化中期計画の着実な推進、地域における中小建設業の受注機会の確保、予定価格の上限拘束性の廃止などを引き続き訴える。
「2000年代に市町村に広がった一般競争入札により、今も中小建設業は厳しい競争を強いられている」と見ている。今年2月には石破茂首相と建設業4団体との車座対話に自身も出席し、技能者の賃金を「民間工事も含めたおおむね6%以上上昇」させることを申し合わせたが、「中小建設業が賃上げの原資を確保するための環境整備も合わせて進めてほしい」とも求めた。
そのためにも、適正な利潤を確保できる「予定価格に限りなく近い価格での受注」を継続して要望している。
予定価格だけでなく、最低制限価格も市町村によって運用が異なり、依然として過度な競争を強いられている会員企業もある。「第3次担い手3法の趣旨が理解されるよう、国の指導が必要だ」と力を込める。
地元の川崎市でも、工業高校の定員が減り、数十人の卒業生に対し、3000社を超える求人票が届くなど、中小建設業の採用は年々厳しくなっている。夏季の気温上昇によって現場の労働環境もさらに厳しくなっている。
「地域のインフラが機能しなければ、住民生活にも大きな影響が生じる。インフラを支える中小建設業が利益を確保でき、担い手を確保できるよう、前例のない対策を早急に講じるべきだ」と強調する。
【略歴】日本大学生産工学部土木工学科卒。1976年河ア組建設業(川崎市)に入社し、96年に代表取締役就任。2011年に全国中小建設業協会理事、19年の同副会長などを経て、6月の総会で第9代会長に就任。72歳。
提供:建通新聞社