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2009/10/29

建設経済研究レポート 新たな建設生産システムの必要性を指摘  建設経済研究所

 建設経済研究所は、「変化の中で揺れる建設産業が進むべき方向とは」と題した建設経済レポートをまとめた。建設業依存度別で見た地域の特徴や建設業の経営革新に向けた取り組みなどを独自の視点から分析。この中では、建設業の農業分野などへの進出に対する一層の政府支援とともに、現行の分業生産体制に代わる新たな建設生産システム構築の必要性を訴えている。
 主なレポートの概要は次の通り。
【建設業依存度別で見た地域の特徴】
 総生産額に占める建設産業生産額の比率(建設業依存度)によって、都道府県を1(高依存)〜5(低依存)の5グループに分類した上で、事業所ごとの元請金額などの違いを分析した。
 それによると、最も依存度が高いグループには、島根・宮崎・北海道・秋田・青森・新潟・鳥取・沖縄・山梨が入り、逆に愛知・神奈川・広島・福岡・東京・兵庫・和歌山・京都・香川・大阪の依存度は低かった。
 建設産業以外の産業構成を見ると、製造業やサービス業の比率がいずれのグループでも高かった。一方で、農業の比率は全般的に低く、その市場規模は建設業依存度が最も高いグループで建設業の4割程度にとどまった。
 こうした結果を踏まえ同研究所は、「農業全体の受け入れ体制の抜本的な向上などがない限り、農業での建設業就業者の吸収にはあまり期待できない」と明記。その上で「政府として、このような転換の支援について地域特性を考慮して実施していく必要がある」などと指摘している。
【新たな建設生産体制の取り組みによる経営革新】
 既存の建設生産システムである分業生産体制の維持が限界に近づきつつあるとの認識を前提に、新たな建設生産体制の在り方を展望した。
 下請企業の非固定化と重層化が進んだ結果、ゼネコンが生産プロセス全体を把握、コントロールできず、優位性のある顧客提案能力を失ってしまった点を問題視し、「現行の分業生産体制は企業間競争時代の企業経営にはふさわしくない」と強調した。
 その上で、新たな建設生産体制として、▽実施工部分を他社(下請会社)にアウトソーシングしない「自社方式」▽実施工部分をグループ会社や協力会社にアウトソーシングするが、これらを下請け任せにせず自己の管理下に置く「下請分業方式(完全管理方式)」―のモデルを提案。こうしたモデルを採用して、業績を伸ばしている建設業2社の事例も紹介している。
【建設業経営の“見える化”への取り組みと経営革新】
 経営者が経営判断に用いる「管理会計」を建設業が活用する場合の問題点や可能性について、建設業者に対するアンケート調査などを基に検証した。
 アンケート結果からは、管理会計に必要な@企業活動の測定A業績評価とPDCAB管理者の責任と権限―について、建設業者の活動がいずれも不十分であることが判明したという。同研究所は阻害要因として「現在の下請けによる分業生産体制」を挙げ、「本来管理会計が適用されるべき部分を外部にゆだねていること」が問題とした。
 管理会計を有効活用する手法としては、戦略的コストマネジメントの一つである「原価企画」の導入を提唱。従来の直接費や現場管理費に適正な利益を積み上げる積算手法を見直し、市場が決定した価格から目標利益を差し引いた上で、許容可能な直接費や現場管理費を割り出す手法に転換するよう促している。