トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2009/11/10

前原誠司国土交通相インタビュー 「公共事業の減少は必然」「大手は海外展開、中小は転業・転職含め選択を」

 新政権が誕生して2カ月足らず―。このわずかな期間に建設産業を取り巻く環境は様変わりした。前原誠司国土交通相は就任早々に八ツ場ダムの建設中止を宣言し、就任会見では「公共事業費の見直しは当然」と言い切った。それを具体化する形で、2010年度予算の概算要求は公共事業関係費を14%減と過去最大の下げ幅まで絞り込んだ。こうした状況変化の中で、建設業にはどんな活路があるのか。前原国交相に公共事業と建設業に対する考え方などを聞いた。(文・構成は編集局=高橋量太)
 ―公共事業の削減を掲げる新政権に建設業は不安を感じています。
 「日本は高齢化、人口減少、莫大(ばくだい)な財政赤字という三重苦を抱えている。まずはこの厳しい現状をしっかりと認識しなければならない。時代の変化を踏まえ日本を持続可能な国とするためには、“コンクリートから人へ”とお金の使い道を変えていくことが不可欠だ」
 「10年度予算の概算要求で公共事業費は前年度に比べ14%減とした。しかし、これだけで終わりではない。インフラは一度造ったら維持管理にお金が掛かる。例えば、道路の維持管理費は日本全体で2兆2000億円に上る。下げ幅がどうなるかは別として、11年度以降も公共事業費の縮減傾向は続くだろう」
 「建設業者の数は50万社余りといわれており、この中で実際に稼働しているところは20万社程度存在とみられる。公共事業の削減に合わせて、この20万社もまだまだ縮減していかざるを得ない」
 ―建設業にはどのような活路があるのでしょうか。
 「世界マーケットで見れば、建設業は成長産業だ。そこでゼネコンの国際展開を成長戦略の一つに位置付けた。高速道路や下水道システム、新幹線、リニアなど世界に誇る技術力が日本の大手ゼネコンにはある。内弁慶でなく海外で仕事を獲得してほしい。縮まる国内市場を地域の建設業と奪い合うのではなく、世界で戦っていくべきだ」
 ―海外展開には国の強力な支援が必要との指摘もあります。
 「確かに日本の支援体制は手薄な面があり、海外展開の支援はより強めていくつもりだ。だが一方で、大手ゼネコンは甘えが過ぎるのではないか。諸外国のゼネコンは海外での売り上げが6割から7割に達するのに対し、日本は2割程度に過ぎない。国際社会でもまれ成長していくことが、大手ゼネコンに課せられた使命だ」
 ―海外に進出できない建設業者はどうなりますか。
 「政府の緊急雇用対策本部では、農業や林業、観光、介護などへの転業・転職支援が必要と訴えた。農業は食料自給率が約40%にとどまり、山林は手入れがずさんなまま放置されている。観光や介護にも人手が必要であり、転業・転職を支える仕組みをつくることが重要だ」
 「例えば、農業は耕作してから2年〜3年はもうからない。建設業者が農業に参入した場合、連結決算で経営事項審査の点数が下がり、本業に悪影響を与えてしまう。農業の赤字を経審の評価対象から切り離すことも考えられる。林業については間伐材を国が買い取るなど、販路を確保することもアイデアだ」
 ―公共事業を削減するスピードが速すぎると、スムーズな経営改革や業態転換は難しいのではないでしょうか。
 「公共事業費を14%減らしても、コスト縮減によって公共事業そのものの削減幅は抑えることができる。日本はオイルショックで省エネ技術が進展した。新政権が掲げるCO2排出量25%削減や公共事業の縮減は技術開発の契機となり得る。コペルニクス的な発想の転換が必要だ」
 「公共事業は確実に減る。これはどの政権であっても必然だ。甘いことを言って延命させるよりは、建設業界で生き残るか、転業・転職を模索するのか、腹を決めてもらった方がいい。厳しい競争の中で生き残ったところが本当の強さを身に付けることができる」

提供:建通新聞社