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2010/06/22

新たな下請債権保全策の検討に着手 国交省が検討会初会合を今月にも

 国土交通省は、下請業者の連鎖倒産を防止する観点から、新たな下請債権保全方策の検討に乗り出す。今月にも「新たな下請代金債権保全策検討委員会」の初会合を開き、信託や支払ボンドといった金融手法の活用によって元請倒産時に下請代金を保全する制度の議論を始める。制度設計と合わせて、新たな制度の実効性を確保するための手法も話し合う。今夏までに検討成果をまとめる方針だ。
 元請けの建設業者などが民事再生法などの適用を受けた場合、そこで働く従業員の給料は優先的に保全されるのに対し、下請業者の債権は労務賃金分を含めほとんど保全されず、連鎖倒産を招く大きな要因となっている。
 国の連鎖倒産防止策としては、中小企業庁の「中小企業倒産防止共済制度」や「セーフティネット貸付制度」があるものの、融資限度額が少ないのが難点。また、国交省が09年7月から運用を始めた「下請資金繰り支援事業」や10年3月からの「下請債権保全支援事業」は事業期間が11年3月までに限られている。
 こうした状況を踏まえ国交省は本年3月に発表した入札契約制度改革に下請保護の一環として下請債権保全策の検討を盛り込んだ。初会合に先立ち今月2日に開いた準備会合では、国交省が諸外国で採用されているさまざまな下請債権保全策を比較検証した結果を示した上で、日本の法体系になじむ仕組みとして▽信託▽支払ボンド―の2方式を例示した。初会合以降は、二つの方式を軸に検討を進めていくことになる。
 信託方式は、発注者から元請けが受け取る工事資金を信託財産化し、下請けへの支払資金をあらかじめ分離・保全しておくことで、仮に倒産した際にはそこから下請代金を受け取ることができる仕組み。08年秋から自己信託という手法が認められたこともあって運用コストが少なくて済み、与信枠の制約が生じないといった利点がある。ただし、工事資金をほかの目的に使用される可能性も出てくる。
 一方、支払ボンドは、元請けと損害保険会社などが下請代金の支払いに関する保険契約を結び、倒産時には損保会社が下請けに代金を支払う仕組みを想定。損保会社による確実な代金支払いが可能となるものの、保証料が高額となるといったデメリットが指摘される。

提供:建通新聞社