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2011/05/10

GPS活用し、東日本大震災の前兆を約1カ月前から把握 CSPジャパン 今後の震災対策にも可能性

 3月11日に発生した東日本大災害に関して、民間のコンサルタント会社が、国土地理院の電子基準点データ(GPSデータ)を使って、地震の約1カ月前から地殻異常変動の前兆をつかんでいたことが分かった。清水建設の子会社で、宇宙開発関連ビジネスのコンサルティングを行っているCSPジャパン(東京都千代田区)がその会社だ。同社のアドバイザーを務め、日本測量協会の会長である村井俊治東京大学名誉教授が明らかにした。「地殻異常変動発生危険度予測」として、今後の震災対策に生かしていければと考えている。
 国土地理院の電子基準点は全国に約1200カ所ある。観測データは約2週間遅れで随時インターネットに公開されている。
 村井教授によると、地殻異常変動に関して、基準点で問題視すべき動きは、距離であれば数a程度で表れる。同社では、3軸の座標軸(x軸、y軸、z軸)で示される電子基準点の挙動を解析し、地殻の歪みとして異常変動を判断する。3軸とも動いていれば最も大きい歪みとみる。
 東日本大震災では、2月5日の観測データ(2月21日公表)に地殻変動の兆候が表れた。変化はその後、東北地方の太平洋岸を中心に、中部地方から北海道まで広範囲に広がり、2月19日の観測データ(3月7日公表)でピークに達した。その後しばらく動きが止まった。そして3月11日に巨大地震が発生した。
 東日本大震災のその後の余震についても前兆を観測している。4月26日に発生した茨城県南部を震源とするマグニチュード5の地震では、地殻の変化が3月上旬から表れた。そして、4月9日の観測データでピークに達した。
 村井教授らが、地殻の変動と地震の関係を最初に確認したのは2003年の十勝沖地震だった。その後、01年1月から07年12月までの8年間に、日本と日本近海で発生したマグニチュード6以上の162の地震を検証した。その結果、すべてのケースで、電子基準点データによる前兆現象が確認できた。大きな前兆が表れるのは、地震の数カ月前から数日前。前兆現象が複数回の場合もあれば1回だけの場合もあった。一方、大きな前兆現象があれば、その後必ず地震が発生することも分かった。
 約1年前からは危険予測にも実験的に取り組んでいる。現状では、前兆現象はマグニチュード5〜6以上の大きな地震しか把握できない。しかし、大地震を予測する上では有効性が高まる。
 また、国土地理院の電子基準点データは2週間遅れの公表だが、国土地理院の許可を得て日本測量協会が行っているサービスを活用すれば、毎日のデータを1日遅れで取得し、分析を早めることも可能だ。
 一方、国家機関でない民間レベルでの危険予測の一般への公表は現状では難しい。
 村井教授は「地殻異常変動発生危険度予測として、鉄道会社や電力会社などが危機管理として活用できる可能性がある」と話している。

提供:建通新聞社