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2011/12/26

八ツ場ダム建設継続 国交相が正式表明

 前田武志国土交通相は22日、八ツ場ダムの建設継続を正式に表明した。「検証プロセスが実務的・専門的な作業を経て瑕疵(かし)なく行われ、代替案と比較して大きな治水効果が確認された」ことなどが継続を判断した理由だという。ただし、民主党内で中止を訴える声が多いことに配慮し、▽利根川水系の河川整備計画を早急に策定する▽ダムを中止した場合の水没予定地の生活再建を支援する法案を次期通常国会に提出する―方針も併せて示した。これを受け国交省は24日に閣議決定を見込む2012年度当初予算案に本体工事関連費用を計上。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権の誕生から2年余りの時を経て、停滞を余儀なくされていた事業がようやく動き出す。
 八ツ場ダムをめぐっては、民主党が09年総選挙のマニフェストで建設中止を打ち出し、当時の前原国交相も就任早々に中止を明言した。09年12月にはダム事業の改革の方向性を議論する「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を立ち上げた。
 有識者会議は10年7月、今後の治水対策の在り方や個別ダムの検証方法を明確化する中間報告を策定。これを踏まえ関東地方整備局がコスト面や治水・利水効果の面から検証を重ね、本年12月に建設継続を妥当とする最終報告をまとめた。有識者会議は、検証が中間報告で示した手法に沿って適切に実施されたことを確認した。
 その一方で、民主党内からはマニフェストを順守する観点から建設中止を求める声が相次いだ。同党・国土交通部門会議は12月、検証が不十分として建設継続に疑問を示す提言をまとめ、前原政調会長に提出。前原政調会長も建設を中止すべきとの方針を藤村修官房長官に申し入れた。
 こうした状況下で前田国交相は、最終的に八ツ場ダムの建設継続を決めた。その際に考慮した事項として▽利根川流域は、人口・資産の集積により災害ポテンシャルが高いという特性がある▽遊水池などの代替案と比較して、短期間で大きな効果が得られる対策であることが検証で確認されている▽東日本大震災から得られた教訓として、例えば浅間山噴火の際には八ツ場ダムが泥流などの安全装置として機能する▽地域に重い責任を担う1都5県の知事の意見を重く受け止める必要がある―ことを挙げた。
 今後の取り組みに当たっては、▽利根川の治水対策では「できるだけダムに頼らない治水」を目指し、その内容を今後早急に作成する利根川河川整備計画に反映するとともに、その作成過程で河川整備計画相当の目標流量をあらためて検証する▽ダム事業中止の場合、水没予定地域などの生活再建に関する法案を、川辺川ダムを一つのモデルとして作成し、次期通常国会への提出を目指す―こととした。
 前田国交相は22日の会見で、「利根川流域の治水の歴史などを考えると、効果的で即効性がある代替案なしに建設を中止するわけにはいかない」などと建設継続の結論に至った理由を説明した。

提供:建通新聞社