国土交通省は、直轄工事で第三者を活用した新たな検査体制を構築する方針を固めた。施工者と契約した第三者が、従来よりも頻度を高めた現場確認を通じて出来形や品質をチェックした上で、発注者と施工者の両者に品質証明を行う仕組みを想定。これによって、発注者は出来高部分払いに必要な検査を簡略化でき、施工者も結果として出来高部分払いを受けやすくなる。2012年度下半期から数工事程度を選んで試行を始める。将来的には全工事を対象としていく方針だ。
直轄工事の品質検査をめぐっては、施工段階での検査頻度を高め品質向上につなげる「施工プロセスを通じた検査」をこれまで試行してきたが、受発注者からは業務負担の増加を指摘する意見が数多く寄せられていた。このため国交省は、品質確保に向けた新たな検査体制の在り方を29日に開いた「直轄事業の建設生産システムにおける公共事業の品質確保の促進に関する懇談会・生産性向上部会」に示した。
新方式では、原則として発注者がすべて担ってきた検査業務のうち、給付の検査に必要な出来形・品質の確認を、施工者と契約した第三者に委ねる。発注者は給付の完了確認を行う際、第三者からの品質証明書を活用することで負担を軽減できる。破壊検査や合否判定はこれまで通り発注者が担う。工事成績評定に使う技術検査も発注者が実施する。一定規模以上の工事で施工者に求めていた「品質証明制度」は廃止する。
第三者の役割は「施工者の品質確保の証明」と位置付ける。具体的には工事の施工状況(施工体制の確認を含まない)、出来形、品質の確認とする。当面は週1〜2回程度、現場に足を運んで確認していくが、情報化施工が一般化すれば、得られた現場管理データで確認できるように効率化する。
第三者の要件は、施工プロセス検査で品質検査員に求めた資格(技術士、一級土木施工管理技士、二級土木施工管理技士など)に加え、技術者としての経験が20年以上あり、国交省発注工事の監理技術者・主任技術者、または総括監督員・主任監督員・技術検査官を務めた経験があることを想定。国交省が認めた資格認定機関が第三者の資格を認定する。
試行に当たっては、発注者が第三者をあらかじめ用意しておき、その業務内容や費用は工事特記仕様書に明記する。品質証明内容の適合性や品質確保の有効性、受発注者、第三者の施工管理での効率性などを検証した上で、適用対象の拡大や本格運用につなげていく考えだ。
提供:建通新聞社