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2012/05/15

《国交省・佐藤技監「国際展開は必然」

 日本の公共投資は、東日本大震災の復興需要によって一時的には増加が見込まれるものの、中長期的には縮小が避けられそうもない。他方、海外に目を向ければ、アジア圏を中心として旺盛な建設需要が存在する。政府もインフラ輸出を成長戦略の一つに位置付け、さまざまな支援策を講じようとしている。ただ、建設産業にとって国際展開はリスクも大きい。そこで国土交通省の佐藤直良技監に、建設産業の国際展開を取り巻く課題や展望を聞いた。(文・構成は東京・報道部=高橋量太)
 ―なぜ建設産業の国際展開が必要なのでしょう。
 「これからの建設産業にとって、国内だけでなく海外の市場も視野に入れることが生きる道だと考える。過去に大手ゼネコンなどが手痛い経験をしたことは事実だが、特に東南アジアのインフラ需要は旺盛だ。しっかりした社会インフラを実情に合った形で供給することが、国だけでなく、技術を持った建設産業の使命であり、官民が志を同じくして進めていくべきだ」
 「日本の社会資本整備が将来にわたり右肩上がりとなることは考えにくい。日本が誇る建設技術も、それが活用できるフィールドがなければ、改良・発展が進まずいずれ朽ち果てる。技術の発展がなければ国力が低下する。そうした意味からも、海外の豊富なフィールドが必要であり、建設産業にとって国際展開は必然だ」
 「ただし、全ての国に日本の最先端技術を提供するのは適当ではない。例えば、日本で昭和30年代に開発された技術が、その国の実情に合っているケースもある。日本でも、過去の技術を見直していけば、最先端でなくとも新しい技術が生まれる可能性がある」
 ―海外特有のリスクが国際展開の足かせになっているとも聞きます。
 「民間企業にとっては、(リスク回避のための)ある種の枠組みが整った段階で、国際展開を進めた方がリスクが少ないのかもしれない。一方で、海外といっても国や発注機関が違えば、仕組みも大きく異なる。共通の枠組みをつくれば大丈夫ということではない」
 「鶏と卵の議論となるが、まずは企業が海外市場で経験を積むことが、リスクヘッジにもつながる。そのためには、建設業だけでなく、コンサルタントやメーカーなどが一体となって、システムとしての受注に取り組んでいくことが不可欠。関係者全てがこうした考え方を共有してほしい」
 ―国交省として、どのように支援を進めていきますか。
 「昨年度、国際統括官を新たに置き、国交省全体の戦略づくりに着手した。各部局の国際担当がシームレスで国際展開を推進している。前田武志国交相をはじめとする政務三役も積極的にトップセールスを展開しており、まさに国交省の総力を挙げて取り組んでいるところだ」
 「日本の建設業が持つ技術力の優れた点を具体的に提示する取り組みが必要だ。例えば、工期順守が日本の総合的な技術の結集だとすれば、工期順守率などのデータが求められる。過去に建設労働災害の実態を調べたところ、日本が圧倒的に少ないことも分かっている。こうした日本の優位性を存分にPRしていきたい」

提供:建通新聞社