ICTを活用した新たな建設管理システムの構築に向けて、建設関係者で構成する「CIM技術検討会」が、「CIM」(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)に関する中間報告をまとめた。この中では、日本の全てのインフラを3次元でモデル化した「仮想日本」をつくり、防災や維持管理上ののシミュレーションなどに活用していくことを技術的な目標として掲げた。その実現に向けて、計画から完成、維持管理までの情報を全てデータとして蓄積し、各段階で関係者が共有する仕組みの構築などが重要と指摘。2012年度中に制度面での改善策を含めた提言をまとめる方針だ。
CIMは、コンピューター上に作成した3次元モデルの構造物に部材の数量やコストなどの属性情報を盛り込むことで、建設生産システム全体を効率化しようというもの。国土交通省が8月に「CIM制度検討会」を設け、本年度中に計10件の業務で試行を始めるなど、導入に向けた動きが本格化しつつある。
今回の「CIM技術検討会」は、CIMと関わりの深い民間団体をメンバーとして、日本建設情報総合センター(JACIC)の呼び掛けにより7月に設置された。国交省の検討会が主に制度面の課題を検討しているのに対し、技術検討会では技術的な課題を整理し、その解決に必要な手法を探っている。
中間報告では、コスト縮減、工期短縮、アセットマネジメント・アセスメントへの活用といったCIMの効果を発揮させていく上で、「業務フロー、執行体制の見直しと、これを実現するためのデータ作成、可視化、データ蓄積技術の確立が不可欠」と強調。構造物の全体から部品、部材レベルにわたり、属性情報を追加した3次元プロダクトモデルを用い、各主体が企画から維持管理といった各フェーズ間で相互運用する手法の構築を求めた。
また、プロジェクトの関係者が互いにプロダクトモデルを確認しながら意見を交換する場や、こうした意見を集約し事業推進の中心となる「CIMマネージャー」の存在が重要とした。
今後は「基本問題/データモデル/属性WG」と「計測技術・情報化施工WG」という二つの作業部会で、▽国家インフラモデルとしてのCIMの理想像▽CIM導入の効果や技術的課題▽BIM、国際動向に関する調査▽情報化施工▽ICタグなどの活用▽国交省の制度検討会への提案内容―について検討を深め、12年度末の提言につなげていく。
提供:建通新聞社