国土交通省は、河川事業の事業評価に当たり、人命損失やライフラインの途絶など貨幣換算が困難とされていた指標を新たに位置付ける方向で検討を進めている。10日の「河川事業の評価手法に関する研究会」で、こうした指標の定量的な推計手法を示す「水害による被害推計の手引き」(試行版)の在り方について意見を交わした。2013年4月から、この手引きを踏まえた新たな事業評価手法を導入する方針だ。
河川やダムなどの事業評価は、これまで費用対効果分析(B/C)によって貨幣換算が可能な項目だけを便益として計上してきた。ただ、東日本大震災に代表される大規模な水害では、多くの人命が失われるとともに、ライフラインの途絶、経済被害の波及が発生している。こうした状況を踏まえ国交省は、治水事業が持つさまざな被害軽減の便益を適正に反映する必要があると判断し、事業評価手法を見直すことにした。
新たな事業評価では、従来の費用便益分析に加えて、現在検討中の「水害による被害推計の手引き」に基づく定量化指標で効果を分析して、総合的に評価する。定量化指標では、事業実施の前後での被害の違いを明確化する。
具体的な評価項目としては▽死者数▽最大孤立者数▽機能低下する主要な防災拠点施設・医療施設・社会福祉施設数▽途絶する主要な道路・鉄道▽浸水する地下鉄などの路線・駅▽地下鉄の機能復旧に要する期間▽電力・ガス・上下水道・通信などの停止により影響を受ける人口▽経済被害の域内・域外への波及―などを想定している。
提供:建通新聞社