国土交通省は、地域維持の担い手を確保するための「地域維持型契約方式」について、都道府県・政令市を対象とした導入状況調査結果をまとめた。それによると11月までに地域維持型契約方式を導入した団体は14道県・1政令市で、このうち地域維持型JVの導入は4県にとどまった。自治体からは同方式を導入しない理由として「包括発注による受注機会の減少が問題になる可能性があるため」といった声が上がった。
地域維持型契約方式は、災害対応や除雪、インフラの維持管理といった地域維持事業を円滑に実施するための仕組み。複数の工種や工区を組み合わせた包括発注や、複数年にわたり事業を任せる複数年契約を活用することを想定している。また、国交省の中央建設業審議会は地域に精通した建設業で構成する地域維持型JV制度を設け、その活用を促している。
ただ、国交省が12日の基本問題委員会に示した調査結果を見る限り、地域維持型契約方式の活用が広がっているとは言い難い。前回11月の小委員会では委員から「地域建設業の中には、他の工事で受注を競う相手と一緒に地域維持事業を担うのは難しいと話す者が多い」との指摘も出た。
このため国交省は、地域維持型契約方式に対する認識を都道府県・政令市にあらためて確認し、制度的に改善すべき点があるのかどうかを洗い出すことにした。
ヒアリングで包括発注を導入した理由を尋ねたところ、「除排雪事業の主な担い手である建設業の経営体力が低下し、倒産や廃業、撤退が増えている」「災害時などの応急対応を迅速化するため」「従事者の高齢化が進んでおり、技術の継承や後継者不足が懸念される」など、地域建設業の疲弊に対する危機感が背景にあることが分かった。
導入による効果としては、「発注業務の効率化」「発注ロットの拡大による参加業者の増加」「受注者は長期的な収入予測を基に計画的な設備投資や人材の確保が可能」といった点が挙がった。
一方で導入しない理由をめぐっては、「包括発注による受注機会の減少が問題になる可能性があるため」「包括発注では、広範囲の災害への対応に困難を極めることが懸念される」など、既存の枠組みとのすり合わせが課題であることが明らかとなった。包括発注を導入しつつ、地域維持型JV制度を導入しない理由を尋ねてみると、「維持業務の担い手確保が急務な状況ではない」「路線ごとに担い手が確保されている」「包括発注を試行したところ、事業協同組合が受注した」などの回答が目立った。
提供:建通新聞社