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2013/07/19

日建連 賃金支払い状況調査などで要領

 日本建設業連合会(日建連)は18日、会員企業が受注した公共工事で、技能労働者へ適切に労務賃金が支払われているかどうかなどを調べるための要領を定めた。調査期間は当面2013・14年度の2年間とし、工事価格が1億円以上ないし3億円以上の案件の一定量を抽出。使用頻度の高い18職種の全ての下請けを対象に、賃金データを四半期ごと、社会保険の加入状況を年1回のペースで集計する。結果は国土交通省に報告し、労務単価を改定する際の参考にしてもらう。併せて、適切な賃金の支払いを下請けに要請するための要領もまとめ、元請けは下請けの社会保険加入に必要な法定福利費の全額を1次下請けに支払うことなどを規定した。7月末から8月にかけて各支部で説明会を実施して取り組みを始める。26日には、調査の実施方針などを盛る大本の「労務賃金改善等推進要綱」を含め、日建連の姿勢を太田昭宏国交相に報告する。
 日建連は13年度の設計労務単価の大幅アップや、技能労働者の適正な賃金水準の確保を求める太田国交相の要請を踏まえ、4月に「適切な価格での下請契約の締結」などを決議。その一環として、会員企業が技能労働者への賃金の支払い状況を調べ、日建連で取りまとめることにしていた。
 6月には検討会議(座長・大田弘熊谷組社長)を設け、土木と建築の契約実務の違いを考慮した統一的な調査要領の策定作業を進めてきた。
 調査要領を具体的に見ると、対象工事は13年度と14年度の設計労務単価を適用し、13年4月以降に契約した案件から、土木と建築のそれぞれで要件を設定して抽出する。
 このうち土木は、国・自治体・高速道路会社・機構・事業団などの発注分から、役員企業で工事価格3億円以上の原則2割(件数ベース)、役員外企業で1億円以上のものを少なくとも1件以上挙げる。ただし、国交省の要請を受けて労務単価調査を実施している東日本大震災の被災地など(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・新潟の10県)の工事は除くことにした。
 建築については役員企業・役員外企業の別などを問わず、国などが発注した1億円以上の工事の原則2割(件数ベース)を挙げてもらう。
 公共事業労務費調査で定義する51職種のうち、使用頻度の高い▽特殊作業員▽普通作業員▽軽作業員▽造園工▽とび工▽ブロック工▽電工▽鉄筋工▽運転手(特殊)▽同(一般)▽土木一般世話役▽型わく工▽大工▽左官▽配管工▽設備機械工▽交通誘導員A▽交通誘導員B―の18職種を選定。震災被災地での調査方法に準じ、会員企業は工事単位で全下請けの技能労働者の賃金データと、社会保険の加入状況を階層別に集める。
 その上で、工事単位で18職種ごとの調査人数、労務単価の平均値、健康・年金・雇用の各保険の加入人数を整理して日建連に報告する。
 一方、適切な賃金の支払いを下請けに要請するための要領では、元請けが下請けの法定福利費の全額を1次下請けに支払うことを基本に据えた。元請けは1次下請け、1次下請け以下はそれぞれの再下請けの中で社会保険の加入状況を確認し、未加入であれば加入を要請する。
 また、元請けが1次下請けに見積もりを依頼する際は、当該年度の都道府県別設計労務単価を交付する。契約書には、社会保険料の個人負担分などを含む適切な賃金を技能労働者に支払うよう明記する。
 元請け名で「取引先企業のみなさまへ」と題した文書も配布し、賃金支払いなどに関する要請が末端の下請けまで行き渡るようにする。

【賃金改善要綱=5年後は下請けを2〜3次までに】

 大本の「労務賃金改善等推進要綱」には、技能労働者の賃金水準の改善に向けた対応の柱として▽適切な労務賃金の支払いの要請▽労務賃金の状況調査の実施▽社会保険などの加入促進▽適正な受注活動の徹底▽民間工事における取り組み(民間工事での労務賃金確保)▽重層下請け構造の改善▽技能労働者の処遇改善の総合的な取り組み(労務賃金状況調査の期間延長など)▽関係方面への要請―を掲げた。
 このうち重層下請け構造の改善に関しては、今後、工種別・職種別に改善の必要性と可能性を検証。5年後の17年度をめどに可能な分野で原則2次(設備工事は3次)までの実現を目指す。これに伴い、建設産業専門団体連合会と意見交換することも視野に入れている。
 日建連の中村満義会長は「日建連だけでなく、建設業界が一丸となって技能労働者の処遇改善に取り組まなければならない」と強調した。

提供:建通新聞社