伸び悩む建設産業の生産性―。建設経済研究所がまとめた「建設経済レポート」によると、建設現場の生産効率は06年度まで向上していたものの、09年度以降に低下する傾向がみられたという。同研究所はこうした傾向が建設業就業者の高齢化にあると分析するとともに、生産性向上に向け、建設企業がICTの活用を積極的に進めるべきだと提言。具体的には、北海道の地域建設企業が情報化施工の導入で施工効率を4・3倍に向上させた事例などを紹介している。
建設業と製造業の付加価値労働生産性を比較すると、製造業では1970年代からほぼ一貫して上昇しているのに対し、建設業は横ばいで推移し、その差は大きく開いている。国土交通省が行っている「建設資材・労働力需要実態調査」によると、建設現場の生産性は、2006年度まで省力化が確認されたものの、09年度からは効率が低下する傾向が表れている。
建設経済レポートでは、建設業就業者の高齢化が生産性低下の背景にあると分析。今後も現場の高齢化が進む中で、現場の生産性の改善は急務であるとし、ICTの活用を解決策の一つとして取り上げている。
同研究所では、地域の建設企業に対してICT活用ついてヒアリングし、この中で北海道奈井江町にある砂子組の取り組みを紹介。同社は09年3月から情報化施工の導入を拡大しており、このうち3次元マシンコントロールの導入効果を検証すると、路盤仕上げでは従来工法と比べて4・3倍の面積を施工でき、工期短縮やコスト削減が実現できたとしている。
地域の建設企業は、大手建設企業と比べてICTの活用が遅れがちだが、同研究所では「経営者による迅速な意思決定と、それを社員ら関係者に浸透させる速さは大手と比べても優位性がある」として、積極的な対応を促している。
また、他企業に先駆けて地域建設企業がICTの活用に踏み出すことには、先行投資などに伴うリスクもあるとし、発注者に対して「総合評価方式での評価など、先進的に取り組む企業に対するインセンティブも必要ではないか」と促進策の拡充を促している。
提供:建通新聞社