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2013/11/28

平時でも役立つ¢ホ策の提案訴え ※●25年11月25日 米田雅子氏が講演 神奈川県建設産業構造改善推進大会で 平時でも役立つ防災対策を

 神奈川県が11月25日に開いた2013年度建設産業構造改善推進大会で、建設トップランナー倶楽部代表幹事の米田雅子氏(慶應義塾大学理工学部特任教授)が、「震災復旧における地域建設業と今後の防災・減災政策」をテーマに講演した。米田氏は「巨大地震の発生は、人間の英知を超えている。平時でも役立つ≠ニいう観点で、強靭(きょうじん)な防災対策を皆さんから提案してもらいたい」と訴えた。講演の要旨は次の通り。
■大震災復旧・復興―地域建設業の闘い
 仙台建設業協会は、発災の直後に行動を起こした。震災前に防災訓練を行い、自社の持ち場を把握していたことも功を奏した。岩手県の釜石でも行政が一番最初に頼ったのが建設業界。釜石支部は、大槌への道路ががれきなどで途絶状態だったため、道路の交通が可能な遠野支部からの応援を依頼。こういった連携も大切だ。東日本大震災では、地元企業の6割が発災後4時間以内に活動を開始したという調査結果がある。
 地域建設業は「防災の最前線」であり、「社会インフラを点検・維持する地域の町医者」であり、「複業による雇用創出」も担う。地方の雇用と産業を支えるのは地域の総合産業である建設業だ。
■東北復旧・復興の計画と現状
 ほとんどの地域で復興計画はできている。しかし、その実行は大きく遅れているのが現状。用地買収や手続きに追われている。これからがスタート≠セ。各地ではそれぞれに嵩上げや、盛り土、高い防潮堤の建設などを計画しているが、資材や人手が足りない。持って来る土さえない。
■釜石遠野の森林再生と復興住宅
 森林資源を生かした復興と雇用創出の先導的モデルとなる。まずは林道をつくり、間伐材の搬出を促進。質の良いものは、遠野市の木工団地で加工して、復興住宅の材料になる。ここで使えない木材は宮古市の合板工場に回り、合板となり、被災工場の再建に使用。さらに劣るものは石炭火力発電所の燃料として買い取ってもらう。
 上閉伊地域復興住宅協議会では地域材を使った復興住宅に取り組んでおり、注文が殺到している。しかし、建てる場所がなく、早期には進まない状況だ。
■巨大地震への防災・減災の方向
 これまで、大型地震は、「ほぼ同じ場所で起こる」とされていた。しかし、これは、被害の再発防止を目的とする国の防災対策に沿った考え方といえる。「記録がなければ手を打たない」というのでは対応できない災害が増えている。科学的な根拠を基に幅広い対策を進めなければならない。南海トラフ地震対策特別措置法など、国も新たな施策を打ち出している。
 学会も、個々で活動するのではなく、連携すべき。12月には、30学会が連携する、巨大地震に備えての学術会議を開催する。こういった総合的な検討が必要だ。
■異種の道ネットワーク
 岐阜県下呂市での活動。災害による孤立予想集落からの回避ルートを国道、県道、市道だけでなく、林道や農道に加え、地図に載っていない河川管理道など公共の道、企業などが所有する民間道を総合することで確保する試みだ。現道を活用するから新たな道路を建設するより低コストで済む。
 異なる準拠法令、定義、適用規格などがあり、法制度の工夫が必要だが、国土強靭(きょうじん)化の今がチャンス。
 関東から九州にかけての太平洋沿岸では「命の道」が求められており、新たな考え方でネットワークを形成すべき。
 基本的には津波に強い高架道路の構築が必要。国道や高速道路におけるミッシングリンクの早期解消が求められる。
■まとめ
 地域防災の最前線として、地域建設業への期待は大きい。まず、自社の安全体制(BCP)を確立してほしい。
 皆の知恵を集めないと、大規模災害には対応できない。まずは、周囲にある資源を使って今できる防災対策を進めるべき。

提供:建通新聞社