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2015/08/21

【連載】加入率100%へ〜大詰め迎える建設業の社保対策(2)

【連載・建通新聞社】
加入率100%へ〜大詰め迎える建設業の社保対策(2)

■加入は強み″ 積極雇用に動く企業も

社会保険労務士法人エール 加藤大輔氏 2012年度に始まった建設業許可・更新時などの加入指導を契機に、社会保険に加入した許可業者は1万3710者(3月時点)に上る。3年足らず で、建設業の社会保険加入は当初の予想以上に進んだ。この加入促進を支えてきた背景には社会保険労務士の存在がある。延べ700社を超える建設企業からの 相談を受けてきた社会保険労務士の加藤大輔氏(社会保険労務士法人エール)に加入手続きの実状を聞いた。

 ―どのような建設企業からの相談が多いか。
 「指導が始まった3年前と比べ、小規模の企業の相談が増え、従業員5人以下の2次下請けが多い。きっかけは、現場での指示、建設業許可更新時の指摘、年金事務所の指導の三つに大別される。指導が末端まで及んでいると実感している」

 ―年金事務所はどのような指導を行っているのか。
  「未加入企業に対しては期限付きで加入を求めてくる。中には、現場や許可更新の際に必要な事業所番号を取得するため、役員だけが加入する企業もある。ただ 年金事務所は、新規加入企業に対して原則1年以内に調査を行う。問題を先送りせず、全員が加入するようアドバイスしている」

 ―加入時に、2年間遡り、未納保険料を一括請求されることを心配する企業もある。
 「督促無視などの悪質なケースを除けば2年遡及″の実例は聞かない。年金事務所の通知文に『自主的な届出の場合は加入した月から保険料が発生する』と明記されている。早めに加入を検討することが重要だ」

 ―加入後に支払う保険料の目安は。
  「給与総支給額の15%が目安。年収400万円の社員では年間60万円。月額5万円を事業主と社員個人がそれぞれ負担する。国民健康保険や国民年金を納め るのと比べ、保険料の半額を事業主が負担する厚生年金や協会けんぽの方が個人負担が軽くなる場合もある。特に扶養配偶者がいる場合は、世帯で支払う保険料 が安くなるケースが多い」
 「年収400万円を支払う社員が6人いる企業で試算すると、合計で月額約30万円の事業主負担が生じ、企業が存続する限り続くことになる」

 ―事業主負担を避けるため一人親方を選択させる経営者もいるか。
  「技能レベルの高い職人や主任技術者は社員として保険加入し、やむを得ず残った従業員に一人親方になってもらう企業はある。ただ、見た目の減収を嫌がる従 業員本人が一人親方を選択することも少なからずある。実際、一人親方の労災特別加入者数の増加、若年化、加入日額の低額化の傾向が見られる。実態としては 何ら社員と変わらず働くのであれば、いずれ、その在り方が問われることになるのではないか」
 「保険加入を負担と考える経営者がいる一方、前向きに捉える経営者もいる。若い世代ほど、社会保険を完備した企業に安定的に勤めたいという意向は強い。保険に加入する企業が出そろっていない中、保険加入を強みに積極的に雇い入れを行う企業もある」

 ―マイナンバー制度の影響は。
  「日本年金機構は17年からマイナンバー制度の個人番号と法人番号を未加入対策に活用するとしている。企業単位で加入していても、未加入従業員がいる企業 への指導が容易になる。国交省が進めている対策で、企業単位の加入状況は一定の成果を挙げるだろうが、マイナンバー制度導入で、あらためて対応を迫られる 建設企業が出てくる可能性はある」