トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2015/10/31

マンション傾斜問題の影響(下) (鹿児島建設新聞・ジレンマ 建設業界の憂鬱)

■問われる企業コンプライアンス 信用回復は前途多難

 横浜市のマンション傾斜問題は、対象工事3040件に関する調査等が進む一方で、自治体の独自検証等によって次々と波紋が広がっている。残念ながら構造計算書偽装問題と同様、社会全体を巻き込む大きな問題となってしまい、建設業全体の企業コンプライアンスまで問われ始めている。

 先日、県建築協会青年部会が行った建築系の生徒・学生との座談会でも、この問題が注目を浴びた。原因はともあれ、地元建築業者の立場から「よくある話ではない」「データ改ざんが悪い」と話し、学生らに「嘘をつくことで多くの人に迷惑をかける」と、人としてのモラルの必要性を説いた。

 しかしここ最近、東洋ゴム、東芝、フォルクスワーゲンなど平気で嘘をつく企業が目につく。われわれ業界内でも「まさかデータを改ざんするとは」と驚きの声が少なくない。

 いずれにせよ、「会社体質や管理体制に問題ある」との指摘がある一方で、「建設業界全体の問題」「個人モラルの問題」との見方も。

 そもそも、わが国の建築物は阪神淡路大震災のような極端な事例を除けば「安全性」に問題は少なく、高い水準にある。それは、設計者や施工会社の信用性≠ニともに、技術者の倫理観≠ェしっかりしていたからにほかならない。

 今回のようなデータの流用や改ざんはこれまでの信用性≠フ根幹を崩し、「正しいことをやっても疑われてしまう」「信用回復には時間がかかる」と、前途多難な現状に頭を悩ます経営者も。

 県内の地盤改良大手業者は「ハウスメーカーや設計事務所から問い合わせは多い」としながらも、「世間が地盤に対する考え方が変わることについては歓迎するべきこと」と前向きに捉える。

 これから不正拡大を含め、さまざまな情報が飛び交う。取材を通して「公表すれば混乱、公表しなければ不満、中途半端では疑心暗鬼が生じる」との戸惑いの声も聞こえる。さらに今後、対象の建物が明らかになってくれば、欠陥がなくても風評被害とともに、マンション不信が増大し、販売への逆風が吹くことも懸念される。

 いずれにせよ、早急な原因追及、真相究明とともに、再発防止策が求められる。それ以上に「対岸の火事」と他人事にせず、「あすはわが身」と危機感を持ち、失い始めている信用回復≠ノ向けて企業倫理∞技術者倫理≠フ再構築に取り組まなければ、ただでさえ人材不足にあえいでいる建設業界に未来はない。