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2015/12/07

「持続可能な建設業」の礎に 建設技能者の育成(建通新聞社・建滴)

 深刻な人手不足の解消につなげようと、建設業振興基金が離転職者や新卒者を技能労働者として養成するために実施している「建設労働者緊急育成支援事業」。基金が直接行う訓練に加え、地域の建設業団体などによる職業訓練も始まり、未来の建設業の礎となる技能者の卵が生まれつつある。
 
 この事業は建設業従事者の確保・育成策の一環として厚生労働省が2015年度に創設した。仕事をしていない離・転職者や新卒者などを対象に無料で職業訓練を実施し、資格取得を支援するとともに就職先を紹介する。厚労省から事業を受託している振興基金を中央拠点、全国16の建設業団体などを地方拠点と位置付けている。人手不足が深刻なとび・鉄筋・型枠などの分野を対象に、それぞれの拠点が職業訓練と資格取得を組み合わせたメニューを提供し、入職につなげようという試みだ。

 地方拠点の一つである東京都中小建設業協会(都中建)が11月30日に始めた通学方式の職業訓練では、会員企業の経営者や先輩技術者が建設業で働く意義や体験談を語った上で参加者と意見を交換。土木・建築の現場を1日掛けて見学し、鉄筋と型枠の施工を訓練するとともに、社会人としてのルールやビジネスマナーも学ばせている。第2週目となる12月7日からは会場を移し、玉掛け技能と小型移動式クレーン運転技能の講習を実施してそれぞれの資格取得をサポート。さらに、18日には会員企業との面談を用意して就職をあっせんする。

 今回の訓練には定員を上回る16人が参加している。建設業でアルバイトをしている女性からの申し込みもあるという。年齢層は23〜65歳と幅広く、建設業のことをよく知らない参加者もいる。彼らが就労を目指す理由や背景はさまざまだが、共通しているのは、資格を手に建設業で働こうと積極的に訓練に取り組む姿勢だ。

 2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした社会基盤整備が活発になる中、技能労働者の不足が深刻な問題となっている都中建の会員企業は、職業訓練を受け、今後、戦力となり得る人材を確保できる取り組みをチャンスだと捉えている。会員の減少に歯止めを掛け、拡大に転じたい都中建にとっても会員に人材を供給できる仕組みは重要なツールとなるだろう。

 定員を上回る参加者のあった都中建の職業訓練だが、その多くが50代。将来的な担い手確保につなげるには女性や若年層を取り込みたいところだ。若い離職者・新卒者・学卒未就職者を呼び込むための働き掛けも並行して進める必要がある。また、せっかく入職した人材が離職しないよう、社会保険の加入や他産業に劣らない給与、休日の確保といった就労環境の改善も併せて進めていかなければならない。

 5年間の時限措置として厚労省がスタートさせた今回の事業では、年間約600人に訓練を行い、その半数程度を建設業へ就職させる算段だ。この取り組みを「持続可能な建設業」を構築するためのスキームづくりにつなげたい。国や自治体、建設業団体、建設企業が連携し、人材の確保・育成策により一層、本腰を入れたい。