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2016/06/03

国土を「測る」「描く」「守る」 〜第1回 三つの役割、三位一体で担う〜

 測量は、国土管理に不可欠な情報であると同時に、現代の社会経済活動の基礎的な情報基盤でもある。測量技術は進化し、測量成果を利用した地理空間情報サービスは急速に普及、拡大し続けている。きょう6月3日は「測量の日」。国土地理院の越智繁雄院長に、国土地理院の役割と「国土を測る」ことの意義、そして、多様化する社会のニーズや環境変化に応えようとするモチベーションの在りかを聞いた。(聞き手は建通新聞社東京支社報道部=脇坂章博)

―国土地理院が社会に果たす役割とは何か。

 「大きく分けて三つある。一つは『国土を測る』こと、二つ目は『国土を描く』こと、そして三つ目は『国土を守る』ことだ。地理院は、これら3つの役割を三位一体で担うことができる組織だということが、重要な意味を持つ」

 「水準測量や三角測量という基本的な測量に加え、昭和30年代以降、航空写真を撮影して地図を作るようになった。それが今では地球観測衛星だいち2号からの情報も使い、3次元的に国土の変化を測るようになっている」

 「では、なぜ、国土を測る仕事が大切なのだろうか。それは森羅万象、万物は全て測ること、対象物をしっかりと、客観的に見るという行為から始まるからだ。その先にさまざまな生産活動があり、社会資本整備があり、そのインフラを使った経済活動がある。さらに、測量は国民の安全・安心を確保する防災・減災にも不可欠なものになっている」

 「国土を測る測量は、全ての生産プロセスの最上流にあると言ってよいだろう。だから、測量の品質が全ての活動の品質を決めることになるし、信頼性や利便性を高めていくことにもなる。まさに、測量こそ、国土管理の原点だ。測量業や地質調査業は建設関連業と呼ばれているが、私は『国土管理業』だと考えている。測ったものは、しっかりした精度で、詳細かつ分かりやすく提供されなければならない。それが紙地図であり、今では電子地図もある。緯度・経度・高さをリアルタイムで測り、図化した成果を迅速に地理空間情報として提供できるようになっている」

 「『国土を描く』ということも、私たちの大きな使命だ。例えば今年2月13日には新東名の豊田東JCT〜浜松いなさJCT区間が開通した。この日は午後3時に開通したのだが、あらかじめ電子地図をスタンバイさせておき、午後4時には新しい地図に置き換えた。国民へのサービス提供をより迅速に行えるようになった結果、物流にも新たな選択肢、変化が生まれているし、新しい道路ができたことで、災害発生時には避難路、緊急輸送路として活用できるようになった」

―この国の国土はぜい弱。日本列島は「災害列島」ともいわれている。

 「日本の国土は、4枚のプレートがひしめき合う、その直上に位置している。地震・火山活動・津波にも遭遇してきたし、洪水、土砂災害といった自然災害の発生は避けては通れない。私たちには、そうした被害をできるだけ小さくする、という命題もある」

 「その点、国土地理院はリスク情報を地図情報にして提供できるし、発災した場合、被害の状況や規模を被災者や国、自治体など関係機関に知らせることができる。マクロな視点から地殻変動も把握できる。起きた現象の大きさをリアルタイムに近い状態で情報提供できる。もちろん、そうした情報はその時の応急災害対応だけでなく、記録に残しておいて、次への備えとして活用することもできる。この国を襲う自然災害の被害を最小化し、国民の生命や国土を守っているという点でも、測量や地図、地理空間情報は大いに役立つ」

 「『国土を測る』『国土を描く』『国土を守る』それぞれが、とても大切な役割だ。さらに、それぞれの任務を遂行するために獲得した地理空間情報を一元化し、相乗効果の発揮を目指すところに国土地理院の存在意義があるのではないだろうか」

提供:建通新聞社