2017/03/06
都が3月納期原則禁止 持続可能な建設業の一歩に(建通新聞社・建滴)
その決断は今後の公共事業の流れを変えるきっかけとなるだろうか。調査、測量、設計など委託業務の平準化に向け、東京都建設局が「3月履行期限(納期)の原則禁止」の方針を打ち出す。工事についても「集中期(10〜12月)と端境期(3〜5月)の契約件数の比率を2倍以下にする」との目標を設定する。
予算制度の仕組み、関係者との協議に費やされる時間、さらに慣例を重視しがちな発注者の意識改革の難しさなどを背景に、依然として工期や納期は年度末に集中している。これを変えるためには「大胆な施策が必要」と判断。債務負担を積極的に活用しながら、委託業務の当初契約での3月納期を禁止するとともに、工事の契約時期の“山”をなだらかにしようという取り組みだ。
都建設局は「公共工事の品質確保の促進に関する取組方針」を策定し、総合評価方式などの適用や平準化に向けた目標を設定している。2016年度は、委託業務のうち3月納期を全体の4割以下、4〜12月納期を4割以上とする目標を設定するとともに、工事では上半期(9月末まで)の契約件数を全体の5割以上にするとしていた。
そうした成果は少しずつ表れ、債務負担を設定した案件は増え、不調も減りつつある。だが、委託業務の3月納期(見込み)は49.2%に上り、工事の上半期契約は44.5%にとどまるなど、いずれも目標を下回る結果となった。工期や納期、つまりヒト・モノ・カネの動きが年度末に集中する状況は大きく変わっていないのが実情だ。
長引く協議による発注の遅れ、不調の発生による契約手続きの遅延、債務負担の活用の不十分さなど、同局が分析した要因はさまざまだ。だが、このままでは都最大の公共事業部局で「平準化」が掛け声だけに終わってしまう。そんな危機感の表れが、委託業務での3月納期の原則禁止▽工事での集中期と端境期の契約件数比率、4〜6月の平均稼働件数の比率設定―などの大胆な目標設定と、職員の意識改革の徹底だ。
併せて総合評価方式などの活用に関する方針も見直し、委託業務では業務内容や予定価格に応じて総合評価方式とプロポーザル方式の適用をさらに拡大。工事については、地域維持の担い手確保など地域ごとの実情を踏まえて各事務所がそれぞれ適用方針を定めることとしている。こうした取り組みには、公共事業の品質を確保しつつ、担い手の確保育成につなげる狙いもある。
平準化に向けた取り組みは建設産業界が繰り返し訴え続けてきた。仕事があるときは集中し、ない時は全くない。そんな状況で人を雇用し、資機材を保有し続けるのは難しい。年間を通じて仕事が続くのであれば、技術者や労働者を安定して雇用することができる。建設局の新たな方針について、地元建設業界や建設関連業界からは評価の声が挙がっている。あとはいかに目標を達成させ、それを都全体の取り組みとして広げていけるのか、その具体化だ。
この取り組みが他の自治体に波及していけば、公共工事は“年間を通してある仕事”になる。「持続可能な建設業」に向けた大きな一歩となることを期待したい。