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2017/04/25

人材育成の象徴に 技能尊重する社会変革を 太田昭宏前国交相

 2013年7月、太田昭宏国土交通相(当時)は、富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を視察し、センターの機能強化と老朽化した既存施設の建て替えを検討するよう指示した。それから3年半、宿泊棟・共用棟の竣工を受け、太田衆院議員は「建設業が人材を育成する上で、象徴的な拠点としての機能をさらに高めてほしい」と、これからのセンターに期待を寄せる。国交相としてセンターの建て替えを前進させた太田氏に、センターに対する期待と建設業の担い手の育成にかける思いを聞いた。
太田昭宏氏
 ―現在の建設業の実状をどう見ますか。
 「大臣就任前から在任中に至るまで、私はインフラの重要性を訴え続け、社会全体に浸透していた公共事業悪玉論≠ニいう認識を変えることに注力してきた。これによって、1960年代に急ピッチで造られたインフラの老朽化対策、激甚化する災害から国民生活を守る防災・減災対策、経済成長へとつながるストック効果の高いインフラ投資という社会資本整備の流れをつくることができたと思う」
 「インフラ整備の重要性に対する認識が社会に浸透するにつれて、インフラを支える技能労働者が不足する状況の深刻さが顕在化してきている。20年前の1997年には455万人の技能労働者が建設業に従事していたが、2010年には331万人まで落ち込んだ」

 ―大臣在任中には、労務単価引き上げなど、技能労働者の待遇改善に力を注がれました。
 「人手不足で人件費が高騰≠オているとよく言われるが、技能労働者の給与はもっと上がっていいはず。この5年間で39・3%上昇した労務単価をさらに現場に浸透させなくてはならない。待遇改善で人手不足に歯止めを掛け、その上で若者をしっかりと育成するという流れを加速することが必要だ」

 ―建設業の人材育成の中核となる富士教育訓練センターはまず宿泊棟・共用棟が竣工しました。
 「2013年、全国建設産業教育訓練協会の才賀清二郎会長から、センターを建て替え、技能労働者を育成する拠点にしたいという要望を聞き、とにかく現地を視察することにした。視察後、すぐに委員会を立ち上げて建て替えと機能拡充を前に進めることにした。そうした動きが実り、今年1月12日にまず宿泊棟と共用棟が完成したことは私としても非常にうれしく思っている」
 「建設業は、若年層の早期離職という問題も抱えている。現場に入って右も左も分からないまま、毎日怒鳴られてこの産業を離れる若者も少なくないだろう。しかし、センターの教育訓練では、体系的に技能を学ぶことができるので、同じ怒鳴られるにしても、怒鳴られる意味を理解できるはずだ。ここでは、IoT、AI、ドローンなどのICT技術を身に付けることもできる」

 ―これからセンターにやってくる若い訓練生にどのような言葉を掛けますか。
 「富士山を見ながら仲間と寝泊りし、しっかりとした技能を身に付けるとともに、建設業の仕事は希望のあるものだと感じてほしい。自分の未来を富士山のようにどっしりしたものにするという気概を身に付けてほしい」

 ―建設業の担い手確保・育成に最も必要なことは何でしょうか。
 「技能労働者の待遇はこれからも引き続き改善しなくてはならない。技能労働者が休暇を取得できない背景には、世の中に『現場で働く人を叩けばいい』という風潮が根強く残っていることがある。技能労働者が技能に見合った報酬を得るためには、価格が安いということだけでなく、技能を尊重する意識の変革を社会全体にもたらさなくてはならない。『給料がいい』『休暇がある』『希望がある』のプラスの3K≠フ建設業にしていく努力が大切だ」

提供:建通新聞社