政府は6月9日、建設工事従事者の安全と健康を確保するための基本計画を閣議決定した。計画は、3月に施行された建設職人基本法に基づくもので、建設現場における労働災害の撲滅、一人親方問題への対応などで、政府が講じるべき施策を示した。国土交通省と厚生労働省は計画に従い、各現場での安全衛生経費の確保、一人親方労災保険の特別加入促進などの具体策を推進する。
基本計画では、建設現場の労働災害により、年間400人の建設工事従事者(一人親方ら含む)が死亡している現状を重く受け止め、労働災害撲滅に実効性のある対策を講じるべきとしている。死亡災害が発生した現場では、労働安全衛生法令が順守されていないことが多く、法令順守に加え、安全衛生経費を適切に確保する必要性を指摘している。
安全衛生経費は、工種・規模・施工場所によって異なるため、まず国交省・厚労省が実態を調査。実態を踏まえ、適切に経費が積算され、下請けに確実に支払われる実効性ある対策を講じる。
一人親方問題への対応も計画の柱の一つ。一人親方は労働安全衛生法上の労働者に当たらず、直接の保護対象にならない。ただ、厚労省の調べでは16年に現場で死亡した一人親方は75人に上っており、計画でも一人親方の安全と健康の確保に『特段の対応』が必要だと訴えている。
具体的には、一人親方労災保険への特別加入の徹底を図る。労災保険に強制的に加入する労働者と違い、特別加入制度は任意であるため、厚労省はこれまで加入を積極的に求めてこなかったが、元請けを通じて加入実態を把握した上で、特別加入の徹底を図る。
建設現場の労働災害の中で最も多い墜落・転落災害については、安衛則に基づく措置の順守を徹底。足場からの墜落・転落については、厚労省の「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」に記載されている『より安全な措置』が普及するよう、実効性のある対策を講じるとした。
建設職人基本法では、政府が閣議決定する基本計画に基づき、都道府県にも計画を策定する努力義務を課している。国交省・厚労省・総務省の3省は各都道府県に基本計画を周知するとともに、計画の策定を促す。
提供:建通新聞社