国土交通省は10月6日、社会資本整備審議会建築分科会・建築基準制度部会の合同会議を開き、建築基準制度見直しに向けた検討を始めた。国交省は会合で、既存不適格の建築物を建築基準法の仕様規定に適合させると、改修工事が大規模化することを問題視。空き家など既存ストックの用途変更を円滑化するため、さらなる性能規定化を含めた制度改正の必要性を示した。建築分科会は、糸魚川火災や埼玉県三好町の倉庫火災を踏まえた建築物の安全性確保なども論点に議論し、年明け1月にも国土交通相に答申する。
全国の建築物の約5割は築30年以上が経過しており、空き家もこの20年で1・8倍の820万戸に増加している。既存建築物のリフォーム・リニューアル工事の受注額(16年度)は、住宅で前年度比37・6%増、非住宅で28・4%増と大幅に増え、ストック活用の需要が急速に高まっている。また、延べ200平方b未満の建築物で、保育所や老人ホームへの用途変更も増えている。
既存ストック活用の重要性や需要が高まる中、建築基準法上で既存不適格に当たる建築物では、用途変更に伴う遡及(そきゅう)適用で大規模改修が必要になる事例が増えている。着工時点で適法の建築物は、その後の法令改正に適合しなくても、直ちに違反建築物とならないが、用途変更などの際に既存不適格が解除されるため、現行基準への適合が求められる。
ただ、採光・階段・給排水設備などは、建築基準法で仕様規定とされているため、既存不適格の建築物を改修すると、工事が大規模化する傾向にある。国交省は、安全性の確保を前提として用途変更を伴う既存ストック活用を円滑化するため、性能規定化を含めた制度見直しを検討したい考えだ。
既存ストックの活用をめぐっては、建築物と都市の関係性を定めた「集団規定」の合理化も論点になる。接道・用途規制にある例外許可について、包括基準の作成などによる手続きの迅速化を図る。
この他、埼玉県三芳町の倉庫火災を受けた大規模倉庫の適切な維持保全、新潟県の糸魚川火災を踏まえた市街地全体の面的な防火性能の強化(建て替え、防火改修)も議論する。木造建築物に対する規制緩和も論点の一つに上がっている。
提供:建通新聞社