国土交通省と総務省は9月29日、総合評価方式の適用工事で低入札価格調査制度の運用を徹底するよう、全国の地方自治体に要請した。地方自治法施行令で認めていない総合評価への最低制限価格の適用事例が一部の自治体に見受けられる、との会計検査院の指摘を受けた対応。両省は法令に沿って総合評価に調査基準価格の適用を求める一方、過度なダンピングを防ぐ「失格基準」を併用することを求めている。
国交省・総務省は9月29日に発出した通知で、総合評価の適用工事に調査基準価格を設定するとともに、調査基準価格を設定する際に失格基準を積極的に活用することを求めた。合わせて、失格基準の価格水準を調査基準価格に「近づける」ことも求めている。
今回の要請を受けて、自治体の中には総合評価を適用する工事案件で、最低制限価格を調査基準価格へと切り替える動きが出てくるものと予想される。失格基準は、2014年度に閣議決定した入札契約適正化指針で、調査基準価格を下回った応札に対して積極的に活用するよう求めているが、自治体が調査基準価格・最低制限価格を設定する際の算出根拠に「中央公契連モデル」がある一方で、失格基準の価格設定についての明確な国の指針はない。
実際に全国建設業協会が行った調査(6月1日時点)でも、低入札価格調査制度に失格基準を設けていない都道府県が9団体ある。
一方、国の明確な指針がない中にあって、独自に失格基準を運用している自治体もある。全建の調査結果によると、群馬県では、調査基準価格から予定価格の5%を差し引いた額を失格基準として設定している。栃木県は、直接工事費・共通仮設費、現場管理費・一般管理費等の「項目別基準」を設け、各工事費目のいずれかを下回った場合に失格とするとともに、調査基準価格から予定価格の3%を差し引いた総額基準も設けている。調査基準価格の98%を失格基準としている名古屋市などの例もある。
調査基準価格をベースに数%を差し引いた額を失格基準とする自治体がある一方、岐阜県発注の土木工事のように、調査基準価格(中央公契連の17年モデル)の内訳である現場管理費を90%から80%、一般管理費等を55%から20%に引き下げた失格基準を設定したり、兵庫県のように失格基準の算出に「ランダム係数」を使用している自治体もある。
これまで最低制限価格によって一律に総合評価でのダンピングを排除してきた自治体が、低入札価格調査制度を適用すると、過度なダンピングを抑制できなくなるとの懸念がある。国交省は、独自に失格基準を設けている自治体の事例を紹介し、情報共有を図ることで、自治体発注の総合評価での適切なダンピング対策を促したい考えだ。
提供:建通新聞社