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2018/07/03

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第7回

■第7回 技能を『高く売る』契機に
 全国建設労働組合総連合 勝野圭司書記長
 
  全国建設労働組合総連合(全建総連)は、一人親方、技能労働者、零細事業主ら62万人を抱える、建設産業の労働組合として最大の組織。現場の最前線に従事する組合員にとっても、処遇改善は長年の課題の一つだ。全建総連は技能者の就労環境の改善にどのように建設キャリアアップシステムを活用しようとしているのか―。勝野圭司書記長に聞いた。20180620全建総連・勝野書記長5(掲載候補)_1

 ―組合員の賃金の現状を教えてください。
 「組合員を対象に毎年行っている賃金実態調査では、4年前と比べ、常用・手間請けの賃金が全国全職種平均で0・5%増、一人親方が6・1%増という結果が出ており、賃金上昇は限定的だ。ゼネコンやハウスメーカーの決算を見れば、大手の好循環から隔絶された状態にあると言える」

 ―システムが現状を改善する効果を生むと考えますか。
 「システムが現場で働く技能者の処遇改善に直接的に結び付くとは考えていない。システムに登録してIDカードを持てばすぐに賃金が上昇する、という甘い考えはないが、処遇改善への条件整備になるという期待はある」
 「現場の労働者は『材工一式』などとされ、いわば資材と同じように扱われてきた。熟練の技能者も見習工も、同じ人員と捉えられている。システムに蓄積された資格と就労履歴は、施主、元請けに直接示すことができ、処遇改善の大きな要素になるはずだ」
 「就労履歴は、労災申請や賃金不払いの証明にも活用できる。技能者にはさまざまな現場に従事した記録が残っていないため、労災申請できないケースもある。システムに就労履歴が蓄積されれば、アスベストによって健康障害を受けた技能者の労災申請にも役立つはずだ」

―システムに対する組合員の反応は。
 「システムの普及に積極的な大手ゼネコンの動きは、まだ地方の現場に直接的な影響はなく、一人親方をはじめとする組合員に理解が完全に浸透しているとは言えない。システムは将来の建設産業に確実に必要になるため、特に若い世代に積極的に登録を促していく」
 「ただ、若い技能者が登録しても、現場で就労履歴が蓄積されなければ意味がない。組合内部の事業主も含め、まずは事業者登録を進めることが重要だ。そうした意味で、大手ハウスメーカーやパワービルダーの反応が良くないのは不安な点だ」

―建設業振興基金から登録申請の受付窓口業務も受託した。
 「全国約300カ所の加盟組合が受付窓口、認定登録機関となり、対面で書類を確認しながら申請を受け付ける。6〜7月には職員向けの実務研修を全国で開く」
 「組合の中にも『結局はゼネコンの囲い込みに利用されるのではないか』という危惧はあった。その危惧は当然のこととしても、第三者としてではなく、システム構築に積極的に関与して少しでも組合員に役立つものにしたい、と考えた。企業の囲い込みがあるとすれば、それは技能者の能力が評価される一つの証左でもある。これからも、組合員の技能をより高く売る手助けを考えていきたい」

―システムがこれからの技能労働の評価にどうつながると考えていますか。
 「技能者の処遇改善という目標に少しでも近づけることを期待する。偽装請負がまかり通ってきた一人親方の雇用を明確にすれば、法定福利費や賃金の支払いを適正化することにもなる。働き方改革で労働時間の概念が現場に持ち込まれれば、それを通じた賃金アップにつなげることができる。われわれ労働組合は、労働力を高く売る組織。そういう意味では、組合員の技能ができるだけ高く評価される仕組みとなることに期待したい」