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2018/07/17

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第9回(最終回)

■第9回(最終回) 建設技能を高付加価値化する
 日本建設業連合会建設キャリアアップシステム推進本部長 村田誉之氏
 
 2023年3月までに会員企業の全現場を登録する―。日本建設業連合会は2017年12月にまとめたロードマップで、建設キャリアアップシステムに登録する会員企業の数値目標を設定。システムの普及を週休2日の実現と並ぶ今年度の『二大事業』に位置付けた。建設キャリアアップシステム推進本部長を務める大成建設の村田誉之社長は、システムが普及すれば「技能者にとって就労の選択肢が増える。技能に適正な評価が付与される。処遇の改善も進み、建設業の担い手の確保につながる」とみている。村田社長@_1

―日建連はなぜシステムの普及を重要視しているのでしょうか。
 「建設現場で働く技能者は、屋外作業中心で労働環境が厳しい上に、報酬は徐々に上昇しているものの製造業より低く、40歳台半ばには頭打ちになり、将来のビジョンを描くことが難しい」
 「こうした状況を理由に、入職者が明らかに減少している。高齢層の大量離職も迫っている。担い手確保のためには、元請けや下請け企業が年功序列ではなく、経験や能力に応じて処遇を決める仕組みづくりが必要だ。システムに蓄積された経験・保有資格のデータを活用することでその仕組みが実現できる」
 「技能者のキャリアを認めるということは、技能者の能力を認めることにもなる。技能者の仕事へのリスペクトにつながり、雇用する下請け企業の強みにもなるはずだ」

―ロードマップでシステム登録の数値目標を定め、普及に本腰を入れていますね。
 「15年にシステム構築の検討を始めてから、ここに至るまでに思いのほか時間を要した。日建連では、25年までに技能者約90万人の新規入職が必要と試算しており、残された時間は多くはない」
 「登録はゼネコン主導で進めるのが得策と考えている。日建連の会員企業を中心に、各社が取引関係にある協力会社組織に登録をお願いする。5月には推進本部長として、会員各社に事業者登録と協力会社の登録促進を依頼する文書を発出している。各社が競争して事業者登録を進めれば、一斉に登録数が積み上がるのではないかと思っている」

―技能者に対してもゼネコン側から登録を呼び掛けていくのでしょうか。
 「会員企業とその協力会社において事業者登録が進めば、技能者の登録は事業者が代行申請できるようになる。6月の準備月間を含め、7月の『全国安全週間』に現場単位で開かれる安全大会では、元請けが技能者に直接登録を働き掛けることも可能だ。システムが稼働した時に現場に入場する全ての技能者がIDカードを保有しているのが理想だ」

―システム稼働後に期待することには何があるのでしょうか。
 「技能者は330万人いると言われているが、この数値はあくまでも推計値。実数は分からない。システム登録が進めば、業種別・年齢別の実数や技能者の年間稼働日数といった就労の実態もつかめる。実数を把握できれば、技能者が定着、離職する要因が分析でき、担い手の確保策を講じる上でも重要な意味を持つことになる」

―地域の元請け、専門工事業には大手の囲い込みを危惧する声もあります。
 「技能者の囲い込みはこれまでにもあったと思う。むしろ、システムで情報が蓄積されれば、技能者が処遇の高い企業に移ることも起こり得る。そこに競争が生まれ、処遇を手厚くする企業がより優れた技能者を雇用できるようになるだろう」
 「さらに言えば、これまでは離職したり、勤務先の企業の倒産により失業した技能者が他産業へ流出してしまうこともあったが、就労履歴がシステムに残れば、技能の見える化による同業他社への再就職の機会が創出され、建設業界にとどまるという選択肢も生まれるはずだ」