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2019/09/04

原点回帰〜複業で地域を支える〜

第14回建設トップランナーフォーラム(5) 
第1部 農業などへの複業化 アドバイザーのコメント

■地域の新ビジネスを建設業がリード

 第1部の「農業などへの複業化」では、森建設(鹿児島県)が「地域を支える多角化経営(建設業×畜産業)」、小坂田建設(岡山県)が「お家周りの町医者とアグリファーム福渡」、太啓建設が「地域の守り手―ストックビジネスや農業に展開」と題して事例発表した。これに対しアドバイザーを務めた国土技術研究センター理事長の谷口博昭氏と農林水産省農村振興局整備部長の横井績氏がコメントを寄せ、建設業が所有する人や技術が農村の新たなビジネスモデルをリードし、価値再構築を支えるとの見解を示した。

谷口氏_1 谷口氏は今回のフォーラムのテーマを「令和にふさわしい」と評価。万葉集で表現された「花鳥風月をめでる心」を地方へのまなざしと重ね「地域を大事にする意味での『原点回帰』が求められている」と述べた。

 そのために必要不可欠としたのは、過度な東京一極集中を解消し地方の特色ある発展を促す取り組み。「国土強靭化と地方創生を推し進め東京と地方のビューティフルハーモニー(=美しい調和)を図ることが重要」と説き、防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策を評価した。

 一方、地方創生の政策で重要となるのが「定住し得る仕事の存在」と指摘。「実現できるのは建設業のほかにない。そのためにも『複業』が不可欠で、とくに農林水産業との連携が必要」と述べた。

 横井氏も、シナジー効果で建設業の強みを引き出していくところに「複業」のポイントがあると強調。「高齢化や生産年齢人口の減少に直面する農村をどう維持していくのか、課題解決に向けて変化を起こしていくチャンス」と述べ、今後考えるべき視点を三つの発表事例からピックアップした。

 森建設については、飼料の開発から飼育、肉の卸し・販売など、畜産の一連の業務を網羅する中で効率的な生産体制を提案、畜舎の建設や機械化の仕事につなげている点を「地域の経済循環を実現し新たな価値を生み出している」と評価。海外との人材交流で地域に多様な関係性を創出している点も「可能性を感じる」とした。

 小坂田建設は地域を支える主体として、例えば家の外まわりの掃除や庭の草刈り、田畑の管理といった中山間地域の課題解決を多面的にサポート。横井氏はこれを「逆転の発想で現場のニーズに対応していく取り組み」と言い、「農村の再構築をけん引するプレイヤーとして力を発揮することを期待する」とした。

 太啓建設の発表に対しては、農林水産省の「人・農地プラン」にそって高収益作物を導入、直売から加工、レストランでのメニュー化など6次産業の観点で価値を高めていることに着目。「農林水産省が普及させようとしている施策をさまざまに取り入れ、所得向上に向けた経営モデルを実現しようとしている点が重要」と評価した。

 横井氏はこれら3事例の背景に、建設業が持つ「人」「技術」「経営マネジメント能力」が共通してあるとも発言。「それらのリソースによって新しいビジネスモデルをつくり、農業のスマート化の実装をリードして、農村の未来を変えていくこと」への期待を話した。(地方建設専門紙の会)
 ※登場者の肩書は6月28日時点のものです。

地方建設専門紙の会