建設コンサルタント、測量調査設計、地質調査業―のいわゆる建設関連業も新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を被っている業種の一つだ。建通新聞社が広域的な受注活動を行っている(一部上場企業を含む)建設関連業20社を対象に緊急に聞き取り調査(14日現在)を行ったところ、従業員の安全・安心や経営リスクの最小化に腐心しながらも、公共事業が事業セグメントの中核になっている企業が多い業種ならではの“懸念”があることが分かった。回答した企業に総じて共通している懸念は「緊急事態宣言対象地域にある発注者と、そうでない発注者によるリスクへの認識の差異」であり、「同じ発注者であっても、組織内でリスクの回避・低減への対応に温度差がある」ことへの“戸惑い”だ。
弊紙の質問に対する主な回答(一部集約)は次の通り。
■従業員の安全・安心の確保
▽「新型コロナウイルス感染症対策統括本部」を設置▽すべての事業場を対象に在宅勤務(シフトを組んでの交代勤務含む)、時差・時短出勤、フレックスタイム制を導入▽対面での社内会議の原則禁止▽都道府県域を超える移動、出張の禁止▽全ての社内イベントの中止・延期▽協力会社との通信のうち、郵送していたものを全て電磁的記録によるものに変更▽公共交通機関以外の手段による移動の奨励▽取締役・執行役員の分散配置▽休校などで子どもの養育が必要なケース、体調がすぐれない、感染への不安がある―などの理由で休暇を望む従業員に有給の特別休暇を付与▽医療用マスク2万枚を発注済み(従業員へ配布するとともに、必要とする機関へ寄付する予定)
■受注・営業活動への影響と、リスクの最小化
▽電話・メールの他、TV会議を最大限活用▽契約関連事務(特に国土交通省以外の電子化されていない自治体など)や、金融商品取引法に則った業務対応などのため、完全な在宅勤務が難しい場合は交代で在宅勤務▽民間企業との取り引き・契約に関する業務の履行については、顧客と個別に協議▽協力会社との契約を円滑に行うため、契約段階からの電子システム導入を全社で準備中
■雇用の安定と不安の払しょく・軽減
▽会社として正社員以外の契約社員を含めて最大限の対応を取ることを決定し、解雇や雇い止め、自宅待機による給与減などは行わないことなどを社内に向けてアナウンス▽雇用の安定を脅かすような状況は幸い発生していないものの、事態の長期化とその影響を懸念▽2020年度の新卒採用について、予定通り内定者全員を採用(入社式と集合研修はオンラインで実施)▽21年度の新卒採用とキャリア採用について、全ての会社説明会・面接をWEBシステムに切り替えて実施▽事態の長期化も予測されるため、在宅勤務制度などの就業環境の整備に努める
■発注者、立法府、行政府への要望
▽「事業場や業務担当者の所在が、緊急事態宣言の対象エリアに含まれるとの理由で、不利益を被ることが無いように徹底した指導をお願いしたい」
▽「契約書類の提出など、在宅勤務では対処できないことへの対応措置を検討し、柔軟に対応してほしい」
▽「各都道府県知事からの都道府県民への要請事項が、理解度の濃淡や誤解を生まないよう、明確に伝えてほしい」
▽「受注業務の一時中止に関する申入れを柔軟に運用してほしい(緊急事態宣言の対象地域外だからといって、一時中止申し入れなどの措置を取らない、などといった強硬姿勢は取らないようお願いしたい)」
▽「発注者から、り患者が出た場合、情報を提供するよう依頼されている。発注者も自らの患者情報を速やかに競争参加者側に連絡してほしい」
▽「緊急宣言地域内の発注者であるにもかかわらず、通常通りの打合せを要求してくる発注者がいる。緊急を要さない場合はWEB会議の利用や、参加人数の最小化に配慮してほしい」
▽「WEB会議など、リモートワークができる環境(ハード面)が整っていない発注者もいる。環境整備を進めてほしい」
提供:建通新聞社