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2020/12/25

コロナ禍に揺れた1年 20年を振り返る

 新型コロナウイルス感染症に翻弄された2020年。感染収束の兆しが見えないまま、とうとう年末を迎えることになった。建設業にとっても、工事や業務の一時中止、現場の3密対策、民間工事を中心とした受注の減少など、コロナ禍の影響に大きく揺れた1年だった。一方で、現場や事務所のデジタル化が加速するなど、建設業の未来につながる新しい「種」も生まれた。コロナ禍がどんな影響を及ぼし、建設産業界がどう対応したのか。コロナ禍をめぐる2020年の建設業を振り返る。

■緊急事態宣言の発令 都は入札・契約を一時中止
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、東京都が週末の「外出自粛」を要請したのは3月25日。その後も感染の拡大は続き、ついに4月7日、都など7都府県を対象とした、改正特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が発令された。
 政府は同日、新型コロナウイルス感染症の基本的対処方針を改正し、「河川や道路などの公物管理」や「公共事業」を事業継続が認められるものと位置付けた。
 これを受けて国交省は、感染防止に十分に配慮し、受注者の意向を確認しながら工事・業務を継続する考えを示した。入札契約についての継続も決定。公共投資の早期執行を促し、景気を下支えする狙いがあった。
 一方で都は、入札契約の手続きについて、緊急事態措置が解除されるまで、当面の対応が必要な案件などを除いて一時中止する方針を決めた。感染症の拡大を防ぐために「できる限りの社会活動を抑制しなければならない」という考えだった。着手済みの工事・業務については国交省と同様、それまでの対応を継続した。

■受注者の対応 都発注工事で17%が一時中止
 受注者サイドの潮目が変わったのは4月13日だ。清水建設の作業所で新型コロナウイルスに感染した1人が亡くなった。事態を重く受け止めた同社は、発注者との協議を前提に、民間工事も含めた作業所の原則閉所を決めた。他の建設会社でも次々と感染者が見つかる。複数の大手ゼネコンなどが「従業員や作業員の健康確保が最優先」だとして、工事の一時中止に踏み切った。
 国交省によると、全国の直轄事業のうち、緊急事態宣言下の4月30日時点で全工事の4%に当たる約280件、業務では全体の14%に当たる約940件が一時中止となった。
 都の発注案件(主要8部局)に限ると一時中止となった割合はさらに高い。4月〜5月に一時中止した工事は約16・6%、業務は約28%に上ったという。
 

■変わる建設現場 「3密」対策が定着
 継続となった多くの現場でも、密閉、密集、密接のいわゆる「3密」を回避するための対応が始まった。
 緊急事態宣言が発令された翌4月8日には、国交省が感染症対策の強化を、官民の発注者や建設業団体に通知。追加費用が掛かる場合には、設計変更によって発注者が費用を負担するという考え方を明示した上で、朝礼・点呼や打ち合わせ、更衣室での着替え、詰め所での食事・休憩時などについて、換気の励行や時間の分散化、オンラインの活用を要請。入場時の体温測定やマスクの着用、消毒液の設置なども求めた。
 コロナ禍への対応はいまも続いている。3密を回避するための感染症対策は、建設現場の新しい日常として定着しつつある。

■受注への影響 投資マインド低下など懸念
 コロナ禍の影響は建設会社の受注にも影を落とす。建設投資は公共と民間で明暗が分かれた。特に民間住宅投資のマイナスが大きく、上半期の住宅着工戸数は前年同期比11・3%減と過去10年で最低の水準。消費増税による着工の減少に、感染症の拡大が追い打ちを掛けた。
 公共部門では「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が12月11日に決定し、今後5カ年でおおむね15兆円が措置される。一方、コロナの影響が長期化する可能性もある中で、投資マインドの低下や雇用情勢の悪化などにより、民間投資がさらに減少することが懸念されている。

■デジタル化の加速 生産性向上で建設革新へ
 3密の回避や非接触の環境整備を促すことなったコロナ禍は、結果的に建設業のデジタルシフトを後押しした。
 テレワークは建設業でも急速に拡大。東京商工会議所の調査(5月末〜6月上旬)によると、建設会社の61・9%がテレワークを「実施」、10・9%が「検討中」と答えた。
 現場のデジタル化・リモート化も大きく前進した。特に現場から配信される映像を使って監督・検査を行う遠隔臨場は、国交省の直轄工事でも大幅に増えた。国交省が12月に発表した集計結果によると、コロナ前に想定した5倍以上の560件(9月末、施工予定含む)で実施されたという。
 政府主導による「行政手続きの書面・押印・対面の見直し」もスタート。デジタルを活用した非接触型の取り組みは、今後もさらに拡大していく。

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 新型コロナウイルス感染症の拡大は、現場や事業所の在り方に大きな影響を与えた。一方で、現場の効率化や生産性向上などにつながる多くの「種」が、コロナ禍の中から生まれた。今後も社会全体のデジタルシフトの流れが後戻りすることはないだろう。建設業でもデジタル化やICTの活用は不可欠な要素となるはず。労働時間の削減、生産性向上、働き方改革による担い手不足の解消など、建設業が掲げる目標の達成に向け、2021年は大きな分岐点になりそうだ。

提供:建通新聞社