国土交通省は、各地方整備局が発注する港湾・海岸工事で、受注者の技術提案を踏まえて予定価格の5%を上限に設計変更を認める、総合評価落札方式の「技術提案評価型ST型」を試行する。対象は、WTOやAランクの工事。すでに各地整に試行を通知しているが、2025年度当初に予定していた大型工事の発注がほぼ完了しているため、補正予算で大型工事が追加されなければ、26年度からの試行となりそうだ。
国交省は、ST型について「25年度の補正予算か26年度当初予算で実施する工事で、まずは1件の採用を目指したい」(港湾局技術企画課)としている。
ST型は、改正品確法に価格以外の要素を考慮する「VFM」の考え方が盛り込まれたことを受けて導入された。従来の技術提案評価型S型とは、設計図書の軽微な仕様変更(目的物、仮設・工法)を伴う「技術向上提案」が認められる点が異なる。
港湾空港関係以外の直轄工事については、すでにST型の試行実施要領をまとめており、5月に各地方整備局に通知した。今回の試行は、この要領の対象外だった港湾・海岸工事でST型を実施するためのもの。
港湾・海岸工事でのST型は、WTOとAランクの工事が対象。特に受注者の技術的工夫の余地が大きい案件を対象とし、各地整が案件ごとに採用の有無を判断する。従来のS型で求めた技術提案に加えて技術向上提案も求めるため、S型と比べて最大20日間ほど手続き期間を長く設定する。
受注者に求める技術向上提案は、品質や環境、現場の安全性の向上や、新技術・新工法の活用をテーマに、各地整が設定する。テーマは▽導入コストが障害となり普及が進みにくい工法▽より安全性の高い工法▽海洋構造物に対する維持管理性が高い仕様▽脱炭素化の推進に効果的な資材▽環境保全につながる工法―の五つを想定しており、この他のテーマも各工事の実情に応じて適切に設定する。
ST型の本格運用に向けて、試行の効果や課題に関するフォローアップも行う。ST型よりも品質や安全性の向上につながったか、従来手法での発注と比較して事務手続きの負担が軽減したかなどを検証し、「港湾空港等工事における総合評価方式の運用ガイドライン」を改定する。
提供:建通新聞社