国土交通省は11月5日、今後の建設業政策に関する有識者勉強会を開き、建設企業における「人的資源」を巡る議論をスタートした。楠田幹人不動産・建設経済局長は、建設業の重層下請け構造が、人材の教育や最適配置といった人的資源の在り方を「困難にしている側面も否定できない」と指摘。活発な意見交換を呼び掛けた。。
国交省は、建設業の持続的な成長・発展に求められる政策を検討するため、「今後の建設業政策のあり方勉強会」を設けている。これまでは大手・中小に分けて建設企業のあるべき姿を中心に議論しており、今回から建設業を支える人材という資源≠ノ関わる政策を話し合う。
12月に全面施行する改正建設業法など、近年の建設産業政策は技能者の労務費・賃金確保をはじめとした処遇改善や、時間外労働の罰則付き上限規制の適用に対応するための働き方改革に焦点を当ててきた。こうした政策は今後も継続しつつ、勉強会では人的資源に関する検討を新たに提起。企業経営の観点から人材教育や配置、就業環境整備といったテーマを取り扱う方針を打ち出した。
開会に当たって楠田局長は、高齢化や人口減少といった社会情勢の変化を念頭に、建設業を持続可能なものとするための議論を呼び掛けた。労働人口のさらなる減少が見込まれる中、建設業で働いている人が最大限に活躍できる職場づくり、将来の担い手が働きたいと思える職場づくりに向けて「人材の確保だけでなく、その教育や配置、就業環境整備に関してどのような取り組みを行っていくべきか、議論を深めることが大変重要だ」と述べた。
重層下請け構造が人的資源を考える上で課題になるとの認識も示した。工事の専門化・分業化や業務量の繁閑差は、建設業特有の事情から生まれた産業構造ではあるものの、企業が細分化されると人材教育にリソースを割けなくなったり、転勤や職種の選択といった人材配置に制約が課される。限りある人材活用に向け、どのような産業構造が望ましいかも議論の焦点になりそうだ。
合わせて、楠田局長は「女性や若者に選ばれる業界、企業の在り方」についても意見を求めた。DXの進展、AIなどの新技術の普及を前提に、「今後、建設業にどのようなスキルを有した人材が求められるか、検討する必要がある」とした。
提供:建通新聞社