埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受けた有識者委員会が12月1日、下水道管路を含めたインフラ全般のマネジメントの推進に関する提言をまとめ、金子恭之国土交通相に提出した。委員長を務める政策研究大学院大学の家田仁特別教授は、今回の提言で最も重要なことが「メリハリを付けた点検や必要な措置」と強調。人口減少が深刻化する中で、「全てのインフラを維持管理する従来の手法は、どう考えても非効率」とし、維持管理の重点化・軽量化を求めた。
家田委員長の説明を受け、金子国交相は「インフラの維持管理を戦略的に転換する必要性を再認識できた」と述べ、「法令を含めた諸制度の見直しや検討を加速化するとともに、国土強靱化に必要な予算を確保していきたい」と語った。
八潮市の事故を受けた「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」はこれまで、大規模な道路陥没事故が発生するリスクがある箇所への特別調査を実施すべきとする「第1次提言」、上下水道管路の点検・調査の高度化や高頻度化、地下空間情報のデジタル化や統合化を求める「第2次提言」をまとめてきた。
今回の提言は、これらに続く「第3次提言」で、有識者委員会が当初に予定していた最後の提言となる。第3次提言には、下水道管路の点検・調査の重点化や老朽化の可視化に向けた方策の他、インフラ全般の安全に対する国民の信頼を確保するための方向性を示している。
具体的には、▽点検・調査を適切に実施する新技術の導入や、インフラの老朽化状況や必要な費用などを市民に共有する「見える化」▽点検・調査の頻度や方法の最適化、対策の優先度の設定などの「メリハリ」▽現場でインフラを維持管理する担い手が、働きがいをもって活躍できる待遇面の対策▽点検・調査から整備・修繕までを一体的に考える総合的なマネジメントの構築▽インフラの管理者と利用者が一体となって維持管理を実施するモーメンタム(政治的・社会的な勢い)の醸成−の五つ。
「見える化」に関しては、インフラの管理者に必要な情報の可視化だけでなく、老朽化の状況を国民にも分かりやすく公表し、インフラの維持管理に対して国民に当事者意識を持ってもらうようにするべきとした。
統合的マネジメント体制の構築では、適切な維持管理に向けて、設計段階からメンテナビリティ(維持管理の容易性)やリダンダンシー(冗長性)の確保を推進すべきとした。
提供:建通新聞社