全国の都道府県・政令市の約4割に当たる26団体が、建設業のICT活用に対する助成制度を設けていることが分かった。地方自治体が発注する工事でのICT活用の適用拡大といった効果も出ているという。国交省は、ICT活用を通じた生産性向上や労働災害防止に向け、助成制度のさらなる充実や自治体の支援体制整備を促していく。
改正入契法により公共発注者には、公共工事でのICT活用に向けた助言、指導、援助の努力義務が課された。国交省が都道府県・政令市の取り組み状況を調べたところ、建設業者向けにICT活用の補助金・助成制度を設けていたのは全体の約4割に当たる26団体だった。これに加えて2団体が実施を検討。4団体では過去に制度があった。
実施中の26団体による補助・助成内容(複数回答)は、「建設工事のためのICT機器の導入費用」が最も多く21団体、「バックオフィス業務のためのICT機器の導入費用」が19団体、「ICT機器の操作研修や実地訓練の開催費用」が11団体だった。
例えば、香川県は25年度からICT活用工事普及促進事業補助金を開始。既存の建設機械にICT機器を後付け搭載したり、3次元測量機器や3次元設計ソフトなどを導入するための費用の2分の1を補助している。
自治体の補助事業は地元の建設業者や建設関連業者を対象とする制度が基本となる。生産性向上の必要性は認識していても、大手ゼネコンなどと異なり、投資余力に乏しい事業者も多く、自治体の助成制度の有無はICT活用の進展に大きく影響する。
助成制度のある団体はいずれも、作業時間や人数の削減、労働環境の改善状況を確認して効果を測定。地元業者へのICT技術の浸透や、発注工事でのICT活用の適用工事・範囲が増大したことをメリットとして挙げる団体が多かった。
費用助成ではなく、ICT活用に向けた研修や人材育成に取り組んでいる都道府県・政令市は60団体に上り、全体の約9割を占めた。
また、ICT活用や建設DXの普及促進のための専門的な組織・職員を配置している例もあった。専門組織があるのは▽栃木県▽埼玉県、さいたま市▽東京都▽静岡県▽三重県▽兵庫県▽島根県▽広島県▽山口県▽香川県▽長崎県―。いずれも、直近5年程度の間に組織や職員を配置したという。例えば三重県は、建設DX推進の専門部署を設置したことで、県職員と建設業者の両方で普及を促進できたという。
国交省も25年度、地域建設業のICT活用を支援する「建設市場整備推進事業費補助金」を創設。全国建設業協会(今井雅則会長)を執行団体とし、全国61事業者にドローンやICT建機の導入を支援した。26年度も同様の補助事業を実施する。
提供:建通新聞社