今後の上下水道政策の在り方を議論する国土交通省の有識者検討会は12月12日、複数の地方自治体が一体となって上下水道事業を運営する「経営広域化」のさらなる推進に向けた制度設計を求める、第2次報告書案をまとめた。下水道に関しては、技術力がある自治体が経営基盤の弱い自治体の下水道の維持管理・改築を代行する制度構築も有効とした。検討会の冒頭、石井宏幸上下水道審議官は、報告書案を踏まえた法制度の見直しを見据え「上下水道の運営基盤の強化に向けた諸制度の見直しや検討を加速させる」と述べた。
今回の第2次報告書案では、持続可能な上下水道を実現するために第1次報告書でまとめた、「経営広域化の加速」や「更新負担を先送りしない経営への転換」などの方針を具体化させる施策を整理した。
報告書案では、複数自治体の一体的な事業運営が、下水道事業で実現していないことを問題視。実現につながる広域連携の枠組みを国が制度化し、自治体への支援を充実させるべきと提言した。2026年度予算での新たな補助事業の創設に加え、広域連携の核となる自治体を後押しする制度設計も必要とした。
下水道施設の急速な老朽化が見込まれる中で、自治体の経営基盤が弱いと適切な維持修繕や改築が困難となる。そこで、自治体間で協議した上で、技術力がある自治体が他の自治体の下水道工事を代行支援できる仕組みが求められるとした。災害や事故の発生時には、都道府県が公共下水道工事を代行できる制度の構築も有効としている。
自治体の財源と人材の不足に対し、民間活力を用いる「ウオーターPPP」を活用した上下水道施設の維持管理も重要だとした。個別委託による小規模案件が乱立すると、事業が非効率になるとして、複数自治体による広域での案件形成を前提とした制度設計を求めた。
人口減少が深刻化する中では、施設配置の最適化も必要となる。水道施設については、費用対効果や水供給の安定性などを考慮した上で、集約型と分散型のベストミックスが必要だとした。大規模な浄水場と配水管を活用する「集約型」の給水システムと、地域の水源と浄水処理装置を活用する「分散型」の給水システムを効果的に組み合わせる。集約型は地区によっては給水人口に対する管路の更新費用が高くなるとし、状況に応じて分散型へ転換することを検討すべきとした。
提供:建通新聞社