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2011/04/20

受発注者間の片務性解消へ 第三者活用モデル事業の現地訪問ミーティングを開催 国交省

 受発注者間の片務性を解消するため、国土交通省が2010年度から試行を始めた「公正・中立な第三者の活用モデル事業」―。契約に詳しい専門家が、工事請負契約段階から発注者と受注者の間に第三者的な立場で関与し、起こり得るトラブルを未然に防止しようという試みだ。その初弾となるモデル工事「椎葉村役場新築工事」(宮崎県東臼杵郡椎葉村)で、第三者、受発注者、工事監理者が一堂に会する「現地訪問ミーティング」が3月30〜31日の2日間にわたって開かれた。このミーティングで、第三者を活用する意義や効果があらためて確認された。
 公正・中立な第三者の活用は、FIDIC(国際コンサルティング・エンジニア連盟)約款を参考として、10年7月改定の建設工事請負約款に盛り込まれた。今回のモデル事業は、実際の工事に第三者を派遣し、その効果や課題を把握することが狙い。第三者は、国内外の建設マネジメントや契約監理に詳しい税所陽一氏が務めている。
 現地訪問ミーティングには、税所氏のほか、発注者の椎葉村役場、受注者の吉原建設(宮崎県都城市)、工事監理者の尾前設計(椎葉村)、事務局の国交省が出席。第三者活用の仕組みなどを事務局が説明した上で、施工段階でトラブルになりそうな事項について意見を交わした。
 この中で、税所氏は第三者を活用する意義として、▽受発注者間の対等性が確保される▽契約と書類を読み込んで疑問や問題になりそうな部分を事前確認することで、双方が納得して事業を進められる―ことなどを挙げた。
 また、現場視察などを通じて▽東日本大震災の影響で資機材が入手困難になったり、価格が高騰した場合の対応▽基礎切削を行って玉石が出現した場合の工期・請負金額の見直し▽隣接地で実施されている別の工事の遅れにより生じる進入路の競合の影響―といった事項を、受発注者間であらかじめ検討しておく必要性を指摘した。これによって、受発注者はリスクの存在を事前に認識し、あらかじめ対応方法を想定しておくことが可能となった。
 ミーティング終了後、発注者は「これまでは必ずしも十分には契約約款に精通していなかった。第三者を交えた質疑応答により新たな発見があった」「基礎工事や台風への対応など、契約関係で不安な部分が多かったが、契約図書に照らしてどのように対応すべきか確認できた意義は大きい」と前向きに評価した。受注者も「ミーティングに参加してみて、第三者から発注者、受注者、工事監理者に対する公正・中立な参考意見が期待できると感じた」と述べ、制度の定着に期待を示した。
 今後は、受発注者が行う工程会議の資料や会議録、契約関係資料などを第三者に送付することで情報を共有した上で、工事の最終段階である12月ごろに2回目の現地訪問ミーティングを行う見込みだ。
 国交省は「現地訪問ミーティングを通じて、受発注者間の認識の不一致などトラブルの『種』が解消される効果が確認できた」とみて、本年度も第三者の活用に向けた環境整備を積極的に進めていく方針だ。

提供:建通新聞社