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2015/10/23

社保加入 元請け・上位下請けの関与に期待

 影響力の大きな元請け、上位下請けの積極的な関与に期待―。建設経済研究所は22日に発表した建設経済レポートで、建設業の社会保険未加入問題について考察している。社会保険未加入対策が浸透しつつある一方で、法定福利費が十分に支給されていなかったり、技能労働者自身の意識が低い、といった理由で社会保険に加入せず、一人親方の増加も懸念されると指摘。下請けまかせにした表面的な加入指導にとどまらず、元請けや上位下請けを巻き込んだ産業全体で取り組む必要があると訴えている。
 建設経済研究所は今回のレポート作成に伴い、1次下請けの専門工事業者(躯体3職種、内装仕上げ、塗装)にヒアリングし、建設技能労働者の処遇や社会保険加入の現状を聞いた。
 ヒアリングでは、1次下請けが継続的な取引関係にある2次下請けを集め、社会保険労務士を講師とする説明会を開いていたり、社会保険の加入目標である2017年度までに加入できない2次下請けへの発注を中止するなど、社会保険加入に積極的に取り組む企業があった。
 一方で「(社会保険加入の)原資が無いのに会社負担分を負担すると、会社がつぶれてしまう」「技能労働者が手取り賃金にこだわり、加入に向けた理解が進まない」「2次以下の下請けが標準見積書を作成するための知識が不足している」といった課題を指摘する声もあった。
 また、レポートでは、一人親方の労災保険特別加入の新規加入者が社会保険未加入対策の開始前の11年度と比べて60%増加したとする労働保険事務組合の事例を掲載。19歳の技能労働者が労災保険特別加入の手続きを行った例もあるとして、加入指導を受けた2次以下の企業の都合で、一人親方化が進んでいることを懸念している。
 建設経済研究所では、ある専門工事業者の「これまでゼネコンは客ばかり見てきた。これからは下請けを見ないと現場が弱る。全ての下請けが置かれている状況を理解し、まとまった行動をとることが必要」との声を印象的な意見″として引用。社会保険未加入に代表される技能労働者の処遇に関する問題を下請けの自助努力だけでなく、建設産業全体で解決すべきだと訴えている。
 また、マイナンバー制度で税と社会保障の分野の連携が進めば、社会保険未加入企業に対する加入指導が一層進展する可能性があるとして「今後の動向に一層注視する必要がある」と呼び掛けている。

提供:建通新聞社