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2018/06/19

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第5回

■第5回 元請けが『けん引役』に
 中野土建 藏谷伸一社長(前長野県建設業協会会長)

 建設キャリアアップシステムを活用した技能者の能力評価には、全ての現場で就労履歴が蓄積されることが求められる。未登録の現場では、技能者の就労履歴に空白が生じてしまうためだ。ただ、システム登録の効果が見えにくい地域の元請け企業の中には、システム自体に関心を持たない企業も少なくない。こうした中で、長野県中野市に本社を置く中野土建は、いち早く事業者としてシステム登録を申請した。5月まで長野県建設業協会会長を務めた藏谷伸一社長にシステム登録に踏み切った理由を聞いた。藏谷会長(建設キャリアアップシステム連載5回目)_1

―地域の元請け企業として、今の技能者の処遇をどう捉えていますか。
 「政権交代後、公共工事設計労務単価は6年連続で引き上げられ、ピーク時の97%まで戻ったが、地域・職種によって実勢価格との間にはまだまだ差がある」

―建設キャリアアップシステム構築の狙いには技能の見える化≠ェあります。
 「元請けが直接技能を評価することは難しく、技能レベルの高い技能者が現場の生産性をどの程度高めてくれるのかという判断も難しい」
 「『あの職人は匠(たくみ)の技≠持っている』というのはあくまでも周囲の評判で、そこに証明書があるわけではない。建設キャリアアップシステムには技能者の就労履歴が蓄積され、しっかりとデータで残される。積み重ねた経験が証明できるようになれば、技能者が自らの技能にプライドを持つ契機になるだろう」

―5月16日に事業者登録を申請した。いち早く申請に踏み切った理由は。
 「建設業協会としてのさまざまな要望に迅速に対応してくれ、国土交通省との信頼関係を築くことができた。国交省が自信を持って進める施策であれば、それに応えるべきだと考えた」
 「事業者登録はトップダウンで決めた。私が登録を決断し、既に社内に責任者も置いている。システムを活用すると決めたからには『県内のモデル』になることを目指しており、約100社いる協力会社のうち、役員会社11社にも登録をお願いした。彼らとスクラムを組み、残りの協力会社90社にも輪を広げたい」
 「システムを活用してみなければ分からないことはもちろんある。最も大切なことは、技能者がシステムのメリットに少しでも気付いてくれること。技能者がシステムの良さを感じてくれるよう、修正点を探し、アレンジしていく」

―長野県内の元請け企業はシステムどのように受け止めていますか。
 「システムを理解している企業はまだまだ少ない。登録を考えているのも協会に加入している企業約490社のうち、直轄事業の受注実績のある2割程度だろう」
 「システムの利用料金は中小企業に配慮されており、料金が高いとは思わない。全国建設業協会傘下の企業約1万9000社は、都道府県、市町村から受注している企業が大半だ。まずは都道府県の発注工事でシステムを活用することが必要だろう」
 「従業員3〜5人の組織化されていない下請けが自力でシステム登録するのは難しいだろう。そうした小規模な下請け企業の面倒を見て、システム登録をけん引していく元請けをどれだけつくることができるかが重要だ」

―システムは地域の建設市場にどのような影響を与えるのでしょうか。
 「下請けや技能者が不足していれば、元請けにも必然的に下請け側からの優先順位が付く。現場をしっかりとマネジメントし、適正に下請け代金を支払う元請けの優先順位は当然高くなる。システムを生かしてこれら元請けの力をどう高めるか。最終的には企業としての責任が問われることになるのだろう」