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中央ニュース

2022/08/16

第16回建設トップランナーフォーラム(5)

 瀬戸建設は、1907年に創業した神奈川県小田原市に本社を置く老舗企業。木造や鉄骨、鉄筋コンクリート造の住宅から大規模建築までさまざまな案件を請け負う。リノベーション工事を多く手掛けている近年の代表作が、2021年6月にオープンした環境配慮型ホテル「江之浦リトリート 凛門」。建設会社の提案力を生かし、環境への配慮に徹底的にこだわったのが特徴だ。同社の瀬戸ひふ美さんは、設計を始めるのに当たり、「建築から運営まで環境配慮を一貫していくという約束事をつくった。環境に配慮した“使わない選択”と“使い続ける選択”の連続だった」と振り返る。
 築30年のうち、ここ10年ほど使われていなかった“お化け屋敷のような”休眠状態にあった神奈川県小田原市の旧保養施設を取得すると、同社は2014年に「免疫を上げることを特化した場所」をキーワードに社内で企画書を作成。翌年、神奈川県の未病による県西地域活性化公募に応募、さらに17年には国土交通省の小規模不動産特定共同事業に応募し、18年から設計検討を開始した。19年から20年12月にかけてリノベーション工事を行い、構想から7年かけて21年6月に開業にこぎ着けた。
 環境配慮にこだわったリノベーションで、「最大の特徴」というのが室内の間仕切りのように設置する「パネルシェード」。冷水や温水を直接パネル内に通しその輻射を使った冷暖房システムで、エアコンを“使わない選択”をした。従来のエアコンを使うよりもエネルギーコストが半分以下になる。「夏は森林の中にいるように涼しく、冬は木漏れ日の中にいるような暖かさを感じる。間仕切りとしても美しい効果がある」と、瀬戸さんは自信を見せる。
 この他、外周りは地域の自然に調和した色を選択。どちらかといえば目立つのではなく、自然に隠れるような配色を意識した。室内には持続可能な建築素材を選び、木材は全て天然木の自然素材にこだわった。運営面でもこだわりは多い。ホテルスタッフと共に考えた地域の間伐材を使用した客室内のアメニティ、ホテルでは初めて導入された酸性電解水とアルカリ性電解水を生成できる機械の設置、環境負荷が少ない菌を使った洗浄剤、オーガニックコットンを使ったオリジナルの靴下・館内着などが好評だ。
 高齢化率や空き家率が高い地域に凛門は立つ。長い間使われなかった旧施設をリノベーションした新たな施設の誕生で、「暗い雑木林の中に明かりが灯ったような安心感が生まれた」(瀬戸さん)という。同社は遊休不動産の活用で経済効果、安全・安心をもたらしながら、地域に根差した取り組みを展開し続ける。(地方建設専門紙の会・建通新聞社)