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2023/10/12

多能工の能力評価 ルールづくりへ実態調査

 国土交通省は、多能工の建設キャリアアップシステム(CCUS)での能力評価に向けた検討を始めた。2023年度に公共土木工事での実態を調査した上で、24年度以降に、能力評価のルールの在り方をまとめる。実態調査はアンケート方式により、都道府県建設業協会9団体の会員約200社を対象に、建設経済研究所(RICE)が実施する。
 多能工は、連続した複数の作業や工程を遂行するスキルを有する技能者と定義される。国交省ではCCUSの技能レベルを用いて、「一つの職種でレベル2相当以上の技能を持ち、かつ、他の職種でレベル1〜2相当以上の業務を行える者」とイメージしている。多能工の活用効果としては、工期が約20%削減できると分析。例えば、鉄筋コンクリート構造物の構築工事で、起工測量から土工、鉄筋、型枠、コンクリート打設までを、それぞれの専門工が施工した場合、全工程を終えるのにおよそ40日かかるが、多能工なら30日で済む。
 職種の入れ替えが不要で手待ち時間が縮減でき、一連の作業を同一の者がマネジメントするため、作業を効率化しやすいという。
 ただ、現状は、CCUSで多能工という職種分類がなく、多能工と言われる技能者のレベル判定ができない。そこで、異なる分野の複数の技能を有する多能工に対し、適切な評価基準を設けることとした。
 アンケートでは、▽多能工の実態把握(職種、経験年数、保有資格)▽多能工を能力評価する際のルールの在り方の検討(現行の能力評価制度と実際の対応関係)―などについて調べる。具体的には、一般土工に携わる多能工が担う職種の組み合わせについて、頻度や濃淡を把握する。例えば、躯体・とび・鉄筋・型枠は「ほぼ必須」、左官は「工事による」と示すようにする。
 調査対象は公共土木工事を請け負う地場ゼネコンを軸に、直営・半直営で働く一般土工の実態を把握・分析する。アンケート先となる建設業協会は、鹿児島、宮崎、徳島、高知、島根、滋賀、岐阜、宮城、栃木の9団体。建築分野の実態は24年度に別途調査する。
 調査結果を踏まえ、国交省で多能工の能力評価ルールを策定し、多能工の処遇への反映を目指す。
 少子高齢化に伴う担い手不足の時代に、複数の職種を1人でこなせる人材は、繁閑調整や受注機会の拡大にも役立つ存在となる。多能工の育成・活用に向けて、技能者自身がスキルアップに対するモチベーションを保つことができる環境整備が求められている。

提供:建通新聞社