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2024/02/21

建設業法改正案 労働者の処遇確保を努力義務化

 国土交通省は、建設業法と入札契約適正化法の一部を改正する法律案をまとめた。建設業者の責務として、新たに労働者の「処遇確保」を努力義務化する。その上で、著しく低い労務費の基準を示し、それを下回る形での契約を禁止する。違反した発注者(民間含む)には、国交大臣が勧告できるようにする。受注者には、総価での原価割れ契約の禁止規定を新たに適用する。賃金の行き渡りをルール化することで、技能者の処遇改善、将来にわたる担い手の確保につなげ、持続可能な建設業の実現を目指す。3月上旬に改正案を提出する。
 改正案では、労務費が技能者に確実に行き渡るようルールを整える。具体的には、受発注者・元下・下下間の契約で、著しく低い労務費での受注者による見積もり提出と、注文者による見積もり依頼を禁止する。その際の基準となる労務費は、中央建設業審議会が「労務費の基準(標準労務費)」として作成・勧告する=イメージ図。著しく低い労務費で契約した発注者(民間含む)に対しては、国土交通大臣が勧告できるようにする。勧告に従わない場合、その勧告内容を公表する。
 総価での原価割れ契約の禁止事項については、これまで注文者を対象としてきたが、受注者にも当てはめる。
 この他、請負契約の前には、契約後に影響を及ぼす可能性のあるリスク情報(おそれ情報)を受注者から注文者に提供することを義務化する。併せて、資材が高騰した際の請負代金の変更方法を契約書記載事項として明確化。契約後には、受注者が契約変更協議を申し出た場合、注文者に対して、「誠実に協議に応じる努力義務」を法的に位置付ける。資材高騰の影響が労務費へのしわ寄せとして及ばないようにする。
 建設業の商習慣では、特に民間工事において、元請けの総価一式による請負契約が根付いている。このため、契約後に発生した資材高騰などで余分にかかった費用は、基本的にその請負契約額内で対応することになる。実態としては、建設業特有の重層下請け構造の中で、価格転嫁が進まず労務費を圧迫するケースが少なくないとされる。また、不況下で受注競争が激しくなった際には、しばしば労務費を価格競争の原資としたダンピング受注が横行してきた。
 今回の法案により、重層構造の契約過程で、労務費が不当に目減りしないようにするための仕組みが制度化されることになる。持続可能な産業となるため、建設業界には、新たな仕組みに基づき末端の技能者にまで着実に賃金が行き渡らせる姿勢が求められる。

提供:建通新聞社