盛土規制法の規制区域を指定し、運用を開始した自治体数が、都道府県・政令市・中核市の半数に相当する66団体となったことが、4月1日時点の国土交通省のまとめで分かった。同法は、2021年に静岡県熱海市で甚大な被害をもたらした土砂災害を受け、宅地造成等規制法(宅造法)を改正する形で施行する新法。5月25日までは、経過措置として旧宅造法による規制が適用されている。
旧宅造法は、規制の対象を宅地造成に伴って実施した盛土や切土に限定し、宅地に被害が生じるがけ崩れや土砂災害を防ぐことを目的としていた。盛土規制法ではこの規制の範囲を広げ、宅地造成などの用途に限らず危険な盛土を全国一律で規制する。
具体的には、都道府県・政令市・中核市が、市街地や集落などを対象とする「宅地造成等工事規制区域(宅造区域)」と、山間部や農地などを対象とする「特定盛土等規制区域(特盛区域)」を指定。区域内で盛土や切土を実施する場合に許可や届け出を求める。許可申請が必要な規模は2区域で差があり、宅造区域はより小規模な工事規模でも許可が必要となっている。
4月1日時点では、対象となる都道府県・政令市・中核市の129団体のうち、66団体(51・1%)が規制区域を指定し、規制法の運用を開始していた。いずれの自治体もほぼ全域を規制区域に指定している。
4月1日時点で指定・運用していない残りの63団体も、大半が運用開始のめどを立てている。法改正のきっかけとなった静岡県では、5月26日から盛土規制法による規制を開始する。また、許可申請の基準が比較的緩い特盛区域で不適切な盛土が行われないよう、特盛区域の基準を県独自の条例・規則を定めて宅造区域と同じ基準まで引き下げる。
無許可盛土や命令違反を行った場合は、最大で懲役3年以下・罰金1000万円以下(法人の場合は3億円以下)の厳しい罰則が科される。国交省は、不適切な盛土の通報を呼び掛けるなど、規制の実効性をより高められるようにする。
不適切な事案の摘発に向けては、各自治体で独自の取り組みも施されている。東京都では、警視庁などの関係機関と連携した合同パトロールを実施している他、人工衛星による観測データなどを活用した不適切な盛土の効率的な把握を実施している。大阪府では、ヤマト運輸や大阪府農業協同組合中央会(JA大阪中央会)など4団体と協定を結び、不適切な盛土を摘発するための体制を強化する。
提供:建通新聞社