建築関係の5団体でつくる懇談会は5月14日、建築士試験制度や就職活動時期の改善などを求める「国際的で魅力ある次世代の建築職能人材の育成に向けた提言」を発表した。日本建築学会の竹内徹会長は、「就職活動の早期化、長期化と試験制度の過剰な難問化によって、教育が空洞化し、建設業の体力がそがれている」と話し、国内外で活躍できる建築職能人材の育成が重要と呼び掛けた。
日本建築士会連合会(士会連合会、古谷誠章会長)と日本建築士事務所協会連合会(日事連、上野浩也会長)、日本建築家協会(JIA、佐藤尚巳会長)、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)、日本建築学会の5会は、2023年に産学連携建築教育懇談会(田中友章委員長)を設置。アジアでの国際競争力を高めるため、今後の建築教育についての提言をまとめた。
提言では、採用競争に勝ち抜こうとする企業が学部3年・修士1年に内々定を出すなど、就職活動が早期化・長期化していることを問題視。日建連の建築設計委員長を務める賀持剛一氏は、「特に大学院生の場合、2年間の学習期間のうち半年分だけを見て採用せざるを得ない」と、その在り方を疑問視。就職活動の開始時期の見直しや、通年採用の導入などを検討する姿勢を見せた。
また、就職活動が終わった大学院生や入社1年目の若手が、「過剰に難問化している」という建築士試験の受験準備に注力している実態もある。賀持氏は、「給料の安い新入社員が年間100万円もかかる資格学校に通い、実務と乖離(かいり)した内容を勉強している姿を見ると不自然に感じる」と話し、実務の実態に沿った内容で、適切な水準の難易度の試験に改善すべきとした。
士会連合会の古谷会長も、建築士試験制度について、「確実に改革を必要としている」と述べ、現在の試験内容、特に製図試験の再検討を訴えた。「CADを使った製図が当たり前になっているのに、定規を使った手書きでの製図はナンセンス。フリーハンドでの製図試験などを検討できないか」と提案した。
提言をまとめた産学連携建築教育懇談会の田中委員長は、「アーキテクト要素とエンジニア要素を包括した日本の建築士制度は世界的に特殊で、課題もあるが人材の可能性を広げる強みにもなる」と話し、建築士を志す学生が国内外でキャリアを断絶されることなく活躍できるような方策を検討すべきと訴えた。
提供:建通新聞社