中小受託事業者の価格協議に応じない行為などを禁止する改正下請法・下請振興法が、5月16日の参議院本会議で可決、成立した。2026年1月1日から施行し、春季労使交渉でのさらなる賃上げにつなげる方針だ。「下請け」を「中小受託」、「親事業者」を「委託事業者」に変更し、受発注者の対等な関係構築を目指す。
用語の変更に伴い、下請法は「中小受託取引適正化法」に名称が変わる。中小受託事業者から価格転嫁の要望があったにもかかわらず、委託事業者が協議しない場合や、コスト上昇に見合わない価格に据え置く行為を禁止する。
下請代金は「製造委託等代金」に変更し、手形による支払いを禁止。電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに満額を受け取れない場合は認めない。委託事業者が製造委託等金額を減額した場合、起算日の60日後から支払日までの期間について遅延利息を払う必要がある。
現在は資本金のみで区分している委託事業者と中小受託事業者の基準に、従業員数を追加。製造委託などでは300人、役務提供委託などでは100人を超える従業員がいる場合、委託事業者とみなされる。
中小受託事業者は、委託事業者の法令違反について、公正取引委員会、中小企業庁の他、国土交通省などの事業所管省庁にも通報できる。事業所管省庁には指導・助言権限が与えられた。
また、発荷主が運送事業者に対する物品運送の委託取引も中小受託取引適正化法の対象とする他、木型・治具などを製造委託の対象物に追加している。
下請振興法は、「中小受託振興法」に名称が変わる。多重下請け構造の深い階層でも価格転嫁を進めるため、2者以上の取引段階にある委託事業者と複数の中小受託事業者が共同で振興事業計画を策定できるようにする。
主務大臣の執行権限を強化し、価格交渉・価格転嫁の状況が悪く、指導・助言があったにもかかわらず改善しない事業者には、より具体的措置を求める。
提供:建通新聞社