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2025/05/23

続発する敷鉄板の盗難 金属価格上昇が影響

 工事現場から敷鉄板や鋼材が盗難される事件が相次いでいる。背景にあるのは、金属スクラップ価格の高騰だ。警察庁によると、2023年には敷鉄板の盗難1097件が見つかっている。金銭的な被害は工事保険で補償できても、工期の遅延をはじめ工事への影響は避けがたい。被害を未然に防ぐことが重要になる。
 警察庁によると、金属盗難の認知件数は統計を取り始めた20年の5478件から増加を続けており、23年には1万6276件と約3倍超に増えた。このうち1万0190件と62・6%が関東圏に集中している。
 増加の要因は、20年以降、上昇・高止まりの傾向が続く銅・アルミニウム・鉄などの金属スクラップ価格だ。盗難の多くは、金属くず買取り事業者への売却などが目的と見られる。
 盗難される品目で最も多いのは太陽光発電施設などで使われる金属ケーブルで、23年には8916件と54・8%を占めた。次いで、道路側溝の蓋などに用いられるグレーチングが1697件(10・4%)。工事現場で重機の搬入路や軟弱地盤の足場などに幅広く用いられる敷鉄板は1097件(6・7%)で3番目に多かった。
 国土交通省関東地方整備局のまとめによると、管内の直轄工事でも22年度以降、現場での盗難被害は増加傾向にある。24年度に発生した55件の被害のうち24件と約半数を敷鉄板・鋼材が占めた。
 24年3月に茨城県で発生した盗難事例では、工事用道路に用いていた敷鉄板133枚が盗難された。盗難防止措置として入り口ゲートに置かれていた大型土のうが移され、侵入されたという。
 関東地整はこうした事態を受けて、24年度に資材置き場や工事現場の盗難防止の強化を求める通知を管内事務所などに発出。敷鉄板同士を溶接したり、ボルトなどで連結して盗難を難しくするよう呼び掛けた。門扉や錠前を破壊して侵入する事例が多いため、門扉の補強や大型重機などの重量物の設置といった対策も効果的だとした。防犯カメラやセンサーライト、アラーム等の活用も有効だとした。
 工事現場で盗難が発生しても、工事保険により一定程度の被害額をカバーすることは可能だ。ただ、警察や発注者への対応、盗難された資機材の補充・発注といった手間は大きい。工期遅延につながる恐れもあり、未然対策が重要になる。
 政府は今国会に金属盗対策法案を提出した。買取り業者に対し、取引相手の本人確認を義務付ける。まずは、特に価格が高騰している銅を対象とするが、こうした制度対応による金属盗難全体の抑制が期待される。

提供:建通新聞社