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中央ニュース

2025/05/26

事業評価に費用便益以外の「未来像」視点も

 国土交通省は、公共事業の計画段階で行う事前評価で、事業費と得られる効果を金額換算して比較する費用便益分析だけでなく、国として目指すべき未来像の視点から総合的に評価する考え方を打ち出した。激甚化・頻発化する災害への対応や、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルといった多様な社会からの要請に応える。事業途中の再評価でも、社会的要請を踏まえて計画を見直して事業を継続できるようにする。
 5月23日に開いた公共事業評価手法研究委員会で提示し、議論を開始した。公共事業は原則として費用便益分析を行うよう定められているが、これまでの委員会では、費用便益分析で十分に評価できない事業の効果があると指摘されていた。カーボンニュートラルをはじめ、政府全体の横断的な政策との整合を総合的に評価する仕組みを考える。
 23日の委員会では、新規事業で目指すべき未来像として、23年に策定した第3次国土形成計画や、道路機能の高度化・複合化を目指した政策集「WISENET」、河川沿川の自治体・事業者などと連携する流域治水を例示した。策定作業を進めている次期社会資本整備重点計画に掲げた強靱な国土や持続可能な地域、グリーン社会といった目標も踏まえる。
 また、現時点の政策目標だけでなく、将来インフラに求められる役割に対応できるよう、持続性や拡張性といった視点からも事業を評価する。
 実施中の事業の継続や見直しを判断する再評価についても、総合的な評価を取り入れる。想定を上回る洪水の発生や、災害を踏まえた道路の耐震基準の変更といった社会的要請を反映し、必要に応じて事業を見直した上で継続を判断できるようにする。
 合わせて、再評価に際して費用便益分析の結果のみで事業の投資効率性を判断することのないよう、関係する技術指針の修正案を作成。事業の波及的な影響、実施環境など多様な視点で評価するよう記載する。
 委員会では、事業評価の先行的な取り組みについても報告した。総合的な観点からの評価に向け、道路分野の25年度新規事業を対象にCO2削減便益などの効果を評価した。
 過去の事例を踏まえ、事業中に予見されるリスクを織り込んだ事業費算定の手法も説明した。道路の場合、全体事業費の12・7%〜29・8%の範囲でリスクに応じた費用を計上する。25年度の新規事業評価の対象となった北海道横断自動車道別保尾幌道路で先行して実施した。

提供:建通新聞社