国土交通省は、改正建設業法に基づき12月に施行する労務費の基準について、作成方針の見直し案をまとめた。公共工事設計労務単価に直轄工事で用いる歩掛を乗じて算出することを基本にしながら、共通的な歩掛の設定が困難な場合は、「現場環境・作業内容等に照らして適正に見積もった歩掛」のように定性的な表現も許容するとの方向性を示した。
昨年11月に中央建設業審議会の標準労務費作成に関するワーキンググループで提示した暫定方針を、専門工事業団体との職種別意見交換の結果を踏まえて見直した。労務費の基準に公共工事設計労務単価を活用することは変わらず、歩掛の設定について実態に即した見直しを加えた。
直轄工事で用いる土木工事標準歩掛と公共建築工事の歩掛の活用は引き続き基本とする。その上で、水道工事のように直轄工事の歩掛はなくとも、公的主体が定めていて、直轄工事の積算方法と矛盾しない歩掛がある場合は活用することとした。自治体工事の歩掛を国が参考として示している場合や、営繕積算システム等開発利用協議会がまとめた歩掛が候補となる。
直轄工事での発注実績がなく、その他の公的な歩掛も存在しない戸建住宅については、歩掛調査を別途行うことも記載。
直轄工事の歩掛と戸建住宅の歩掛調査結果のいずれも該当しない職種について、「やむを得ない場合は」定性的な歩掛設定を許容することにした。工事の種類ごとに標準的な規格・仕様の作業内容、設定条件を明記した上で、数値ではなく「現場に応じて適正に見積もった歩掛」との記載を認める。
施工条件によって適正な歩掛は異なるため、労務費の基準の公表時に適用した歩掛と作業内容、適用条件は明示する。個々の建設工事の施工条件や作業内容を踏まえ、適正な歩掛となるよう契約当事者間で補正する運用とする。
また、特殊な技能の必要な作業では労務費を上乗せし、適正な水準を確保することとした。
労務費の基準の作成方針については引き続きワーキンググループで議論する。職種別意見交換での検討結果を踏まえ、11月の中央建設業審議会で作成・勧告する。12月までに改正建設業法を全面施行し、基準を著しく下回るような見積もり・見積もり依頼を禁止する。
労務費の基準の運用方針案についても修正を加えた。契約時に見込んだよりも実際の施工時に労務費が上振れ・下振れした際、基本的にはリスク・利益を受注者が負う方針は維持しつつ、注文者の都合による契約変更が生じたときは協議に基づく精算が「行われるべき」とした。
提供:建通新聞社