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2025/06/12

石綿事前調査者が不足 有資格者の早期育成課題

 工作物を解体・改修する際の有資格者による石綿事前調査が、2026年1月1日に義務化される。厚生労働省のまとめによると、25年3月末時点の工作物石綿事前調査者の資格保有者は6000人を下回る。義務化が残り6カ月余りに迫っているものの、厚労省が必要人数として試算していた6〜8万人の10分の1にも達していない。
 厚労省は、20年に石綿障害予防規則(石綿則)を改正し、建築物の有資格者による石綿事前調査を義務化した。その後、工作物でも同様に有資格者の事前調査が必要だとして、23年1月に石綿則を改正。改正石綿則の周知と、工作物石綿事前調査者の育成のため、約3年間の猶予期間を設けた。
 6月6日時点で、工作物石綿事前調査者の登録講習を受けられる機関は45機関。前年の6月時点では2機関だったが、この1年で大幅に増えた。工作物に関する知識・実務経験がある者や、石綿作業主任者技能講習の修了者は、11時間の講義と筆記試験で資格を取得できる。
 一方、工作物石綿事前調査者の有資格者数は3月末時点で5772人。厚労省は、21年時点での解体・改修工事を行う事業者数や、石綿事前調査を自社で実施する事業者の割合などを基に、最低でも約6万人の有資格者が必要と推計しているものの、圧倒的に不足している状況だ。
 厚労省は、「現場で予期せず事前調査が必要な工作物が見つかる場合に備え、建築物と工作物の両方の資格を取得してもらうことが理想だ」(安全衛生部化学物質対策課)と積極的な資格取得を呼び掛けている。事前調査には、作業開始14日前に地方自治体に届け出る必要があるため、自社内に資格者がいる方が工事が円滑に進むという。
 有資格者による事前調査が必要な工作物は、反応槽、加熱炉、ボイラー・圧力容器、配管設備、焼却設備、貯蔵設備、発電設備、変電設備、配電設備、送電設備。吹き付け石綿や石綿セメント管の他、耐火被覆材、断熱保温材、絶縁体、パッキン、地中円筒管などに石綿が含まれている可能性がある。
 煙突やトンネルの天井板、遮音壁、軽量盛土保護パネルなどの、建築物と一体になっている工作物は、工作物石綿事前調査者だけでなく、一般/特定建築物石綿含有建材調査者や、日本アスベスト調査診断協会(NADA)の登録者でも事前調査が可能だ。
 また、工作物の解体・改修工事の請負金額が100万円以上の場合、事業者は石綿事前調査の結果を電子システム上で報告しなければならない。大気汚染防止法に基づいて解体・改修工事の元請け業者に義務付けている報告もこのシステムから報告できる。

提供:建通新聞社