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2012/06/12

佐藤技監「処遇改善にオープンブック方式を」

 建設現場で中核的な役割を果たす専門工事業―。その重要性は認識されているものの、厳しい就労環境や低い賃金から若手の入職者は減り続け、高齢化が進んでいるのが現状だ。今後、専門工事業が将来像を描くためにはどんな取り組みが求められるのか。国土交通省の佐藤直良技監に、建設専門紙の共同インタビューで話を聞いた。(文・構成は東京・報道部=高橋 量太)
 ―専門工事業の役割をどう認識していますか。
 「建設の世界では、さまざまな技術を持った人が、技術と志を結集してものづくりを進めている。それぞれの工種を担う専門工事業の存在なしに日本の建設産業は語れない。建設関連業についても同様のことが言える。実際にこれら業界の人々と接すると、志や生き様を肌で感じることができる」
 「ただ、安値受注が横行する状況下にあって、こうした高い志が崩れつつある。解決策は以前から指摘されるように処遇を改善すること。若い時に入職して、ある年齢までくれば、家を持ち子供を大学に入らせることができる。それぐらいの処遇が与えられないと、いくら志があっても続かない」
 「技能者が培ってきた専門的なノウハウをもっと評価すべき。いまは賃金が安ければいいという雰囲気になっているのではないか。ノウハウを身に付けたら処遇が良くなる仕組みが求められる」
 ―どうすれば、技能者の処遇が改善できるのでしょうか。
 「目標としては、オープンブック方式(施工者が発注者に全てのコストに関する情報を開示する方式)に近い形が必要と考える。下請けのノウハウを評価できる枠組みも欠かせない。例えば、あるトンネル工事でこの地山の岩質ならば、この人しかいないというケースがある。技術者・技能者も同時に評価することが重要だ」
 ―元下関係の在り方はどうなっていくのでしょう。
 「以前は特定の元請けの仕事しかしていないところも多かった。しかし、工事量が少なくなる中で、1社専従で専門工事業としての技量が磨くことができるのか。今後、元請けはいい専門工事業を選び、逆に専門工事業も立ち居振る舞いが良く、施工管理がしっかりした元請けを選ぶ形になるだろう。新たな秩序が生まれる息吹を感じる」
 「一つの現場に5次、6次の下請けがいることは、一般の感覚からすれば考えられない。ただ、どの国でも、元請けが全てを担うことはあり得ない。一定の重層構造は役割分担の意味でプラス面が大きいが、もう少し工夫の余地はあるのではないか。単なる重層構造の問題ではなく、建設産業の在り方にもつながる大きなテーマだ」
 ―専門工事業の魅力を高めるためにはどんな取り組みが必要ですか。
 「技能オリンピックでは建設関係の種目が少なく、参加者は若者に限られている。ベテランの技能を含め、その存在と重要性を世の中に認知してもらうことが必要だ。現場で一番大事なところを担っているということを分かってほしい」
 「発注者がいくら入札契約制度などを変えても解決にはつながらない。専門工事業の視点から、処遇改善を含めトータルで手を打っていくべき。このままでは、専門工事業の未来、希望が見えない。建設生産プロセス全体で好循環となるシステムを構築していく必要がある」

提供:建通新聞社