トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2015/12/10

杭データ流用 背景に重層下請構造

 国土交通省は8日、「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)の4回目の会合を開き、杭工事の施工データ流用問題に対する再発防止策の議論を本格的に始めた。会合では、元請けに杭工事などの工程で立ち合いを求めるなど、元請け・下請けの責任体制や役割分担を明確にする方向で再発防止策を検討。また、データ流用を許した背景に重層下請など建設業の構造的課題があるとみて、新たな検討体制を設けて議論を深めるよう提言する見通しだ。
 会合では、年内に中間報告をまとめるに当たり、国交省が▽建築物の安全と信頼の回復▽単純ミス・データ確認を軽視する風潮・意識改革▽発注者・設計者・元請け・下請けの役割分担と責任体制の徹底▽杭工事の設計・施工の専門性・技術力の確保▽機器の不具合やヒューマンエラーの抑制―といった論点を提示。
 再発防止策は、日本建設業連合会が年内にまとめる杭工事の管理指針との整合を図りつつ、発注者、設計者、元請け、下請けそれぞれの責任を明確にすることが柱になる。具体策として、元請けの技術者に杭工事などの工程に立ち合いを求めることなども議論されている。現時点では、再発防止策を実施するための建築基準法や建設業法の改正は想定されておらず、告示などで対応する見通しが強い。
 委員会では「設計段階の想定が異なった場合に、発注者が追加費用を支払うかが不明確なまま、元請けが費用を負担するといった仕組みでは、適切な施工は進められない」といった発注者側に対応を求める意見も出たという。
 一方、委員会は、建設業の重層下請構造がデータ流用の直接的な原因とは認められないとしつつも、データ流用の背景にはあるとの認識で一致。副委員長の小澤一雅東京大学大学院教授は重層下請について「施工の品質を担保するという点で、責任分担があいまいになりがちだ」と述べた。中間報告では、重層下請構造に代表される建設工事の構造的な課題を議論する新たな検討体制を設けるよう提言する見込みだという。

提供:建通新聞社