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2021/07/26

建設トップランナーフォーラム(2)

 「若手を『取る』という覚悟をどう示すかだ」―。三和建設(大阪市)の森本尚孝社長は力を込めてそう断言する。
1947年に創業、大阪市淀川区に本社を置く総合建設会社の同社は、主に民間建築物を主体に設計・施工を手掛ける。150人余りの正社員の中で25〜34歳の若手社員が24・5%、女性社員も3割を占めるのが特徴だ。
 技能労働者の高齢化、若年層の建設業離れ、根強い“3K”のイメージなどは建設業界にとって共通の課題。中でも若手の採用や定着には苦労が絶えないという。「若い人たちを中心に“修行を避ける”という傾向があり、長い時間を掛けて技術を磨き、キャリアを積むという建設業の仕事に目を向ける人が少なくなってしまったのではないか」と森本社長は嘆く。
 実際、同社も創業以来、新卒採用を続けてきたが、採用しても半分以上が数年以内に退職、年によっては全滅というケースもあった。世代の断絶により技術の連続的な継承ができない状況が続いていた。
 こうした中で、若手を採用・育成し、定着させ、さらに活躍してもらうためにはどうすればいいのか。
 同社では、経営理念に社員(が活躍すること)を経営の目的そのものに置く『つくるひとをつくる』を掲げる。会社が人をつくるだけでなく、一人一人が自分で成長し自立する形を自らがつくっていく。つまり「経営理念を体現するために新しい人材を採用する」(森本社長)というのだ。
 「採用」段階では、学生らとの接点を持つ努力を惜しまない。森本社長自ら、大学の建築系学科の寄付講座に登壇。建設業について説明すると同時に会社のPRにもつなげる。中小建設業の生の声を伝える学生向けフォーラムも行うなど、さまざまな工夫を凝らしている。
 「育成」では、入社後1年目の新入社員を大阪にある「ひとづくり寮」に入寮させ、同期で1年間共同生活を送ることで“横のきずな”を強くする。社内大学「SANWAアカデミー」も立ち上げ、本格的な社内研修の場を提供。社員が講師を務める年間約50もの講座をつくり、計画的に学んでいく。さらに、別の部署の先輩をメンターに付けて若手社員に客観的な立場からアドバイスするメンター制度、誰でも見ることができる掲示板への書き込み方式とした業務日報など、所属内にとどまらず、社内全体で育てる環境を用意している。
 2017〜21年度の新入社員49人のうち、退職者は7人にとどまっているという。「『若手を取るという覚悟をどう示すか』が若手定着の一つの道ではないか。覚悟がない会社に人は来ないだろう」(森本社長)。
(地方建設専門紙の会)